東京外国語大学言語モジュール

6.3.1. 単母音

 撥音節に現れる単母音には-a、-i、-u、-ɛの4種類があります。

 

1. -aʔ

 広口の母音です。開音節の-aよりも舌の位置が若干上がります([ä])。聴覚印象としては「あっ」と「えっ」に近くなる場合があり、-ɛʔと紛れることがあります。

ကပ် [kaʔ ]近づく
အပ် [ʔaʔ ]預ける;針
ကြပ် [caʔ ]窮屈だ

2. -iʔ

 狭口・前舌母音。開音節の-iよりも若干中央に寄ります([ɪ̈])。なお介子音-y-と共起する場合は発音および聞き取りが非常に難しくなりますので、聞き取り、発音の練習を繰り返しましょう。

စစ် [siʔ ]調べる;純粋な;戦争
ပစ် [pyiʔ ]投げる、捨てる
မြစ် [myiʔ ]河(cʰáuɴ〈ချောင်း〉「川」より「河」幅が広い)

3. -uʔ

 狭口・後舌母音です。開音節の-uよりも若干中央に寄ります。

ချွတ် [cʰuʔ ]はずす、脱ぐ
ပွတ် [puʔ ]擦れる、捨てる
ပြွတ် [pyuʔ ]房になる;スポイト

4. -ɛʔ

 半狭口・前舌母音です。-aʔのところでも書いたように、若い人はこれを-aʔ [-äʔ]に非常に近い発音をする場合があり、その場合は-ɛʔと-aʔの区別がほとんどなくなっています。ただし一人の人の発音であっても語彙によって-aʔ [-äʔ]になりやすいものと、そうではないものとがあるようです。

လက် [lɛʔ ]手、腕
ရှက် [ɕɛʔ ]恥ずかしい
ဝက် [wɛʔ ]