介子音-y-は両唇音(pʰ-, p-, b-, m-, hm-)および側面音(l-, hl-)とのみ結合します。日本語の拗音のような音ですが、本来は頭子音と介子音が連続して発音される音です。日本語の拗音のように口蓋化音[ʲ]ではありません。
わかりやすく言うと(つまり正確ではない)、たとえばpyâは「ピヤ」に近く、日本語の「ピャ」ではありません(実際には速く発音されると「ピャ」に近くなる)。
【参考】ɲ-とny-
ビルマ語にはny-という頭子音連続はありません。ɲ-は単一の子音です。日本語の拗音「ニャ…」との対応で、なんとなくny-と感じてしまいますが、ny-は存在しません。ただ外来語のいくつか、例えば [năyúkălíyá] <နျူးကလီးယား>「核」などの場合にny-の綴りが現れるのですが、実際には頭子音n-と介子音-y-の間に軽音節母音-ăが挿入されます。
ではそれぞれの音について学習しましょう。
1. 両唇音との組み合わせ
両唇音と-y-とが組み合わされると、「ピャ…」「ビャ…」「ミャ…」といった音になります。無声化鼻音hm-の場合、「ミャ」の前に息漏れが発生します。
2. 側面音との組み合わせ
側面音と-y-とが組み合わされると、「リャ…」といった音になります。無声化鼻音hl-の場合、「リャ」の前に息漏れが発生します。
ただ実際のミャンマー人の発音では頭子音l-と介子音-y-との間に軽音節母音-ăが挿入されることが多く、「ラヤ」といったような聞こえになります。
ly- <လျ>やhly- <လျှ>が(無声化)側面音の綴りなのですが、この綴りは例外発音が非常に多い(というよりも、綴り字通りに発音することの方が少ない)ので注意が必要です。
パターンとしては(軽音節母音が挿入される他に)、(1) l-が脱落するもの 例:လျော့ [yɔ̂]「減る」、လျှာ [ɕà]「舌」(hly-からl-が脱落し、hy-となる。y-の無声化音は[ɕ-])、(2) ly-がなぜか無声化してhly-となるもの 例:လျင်[lyìɴ~hlyìɴ] 「素早い」(上記のလျက်「【接続助詞・文語】~(し)て」は、Myanmar-English Dictionary (2nd edition)には/yɛʔ (lyɛʔ)/と書かれています(p.517)が、実際には[hlyɛʔ]と発音されることがほとんど。)、(3) -y-が脱落する 例:လျစ်လျူ [liʔlăyù]「関心を示さず」等があるようです。辞書を引く際には発音記号も必ずチェックするように習慣づけてください。