東京外国語大学言語モジュール

3.2.2.1. 母音を2つのグループに分ける (2/2)
(2)唇の調和 
 舌の調和が一次的なものとして、トルコ語にはさらに二次的な調和として「唇の調和」とよばれる制約もあります。ここでは母音が「円唇母音」と「非円唇母音」という2つのグループに分かれます。
円唇母音:    o ö u ü
非円唇母音: a e  ı  i
 基本的には、形態論的単位の中では同じグループにしか属せないので、まず舌の調和を守り、そして唇の調和に従うといったことになります。先にあげた例においても、鼻burunでは後舌の円唇母音だけが共存し、まつ毛kirpikでは前舌の非円唇母音だけが共存しています。他にも以下の例があげられます。
肩 omuz   胸  göğüs
腹 karın    ひじ dirsek
omuz, göğüs
karın, dirsek
 
 腹karınは後舌の非円唇母音だけ、ひじdirsekは前舌の非円唇母音だけ、肩omuzは後舌の円唇母音だけ、胸göğüsは前舌の円唇母音だけが単語内で共存していることが確認できるでしょう。
 トルコ語では原則的に第2音節以降にoとöを用いないという制約があります。それによって、唇の調和は条件付きとなり、舌の調和だけを守っている以下のような語形もできます。
のど boğaz  へそ göbek
boğaz, göbek