東京外国語大学言語モジュール

5.14. その他
 無声声門破裂音[ʔ]について若干記しておきます。[ʔ]は、3つの場合で実現することがあります。(1)アラビア語の借用語、(2)語頭の母音の前、(3)2子音連続する場合の始めの破裂音、の3つの場合です。(1)については、アラビア語の知識があるものが過剰矯正によって[ʔ]となるようで、通常は脱落するか先行母音を長音化します。(2)については、その実現は任意であって義務的に実現するものではありません。(3)については、例えばyapmakに対して[yaʔmak]のような記述があるようですが、これは[p]の内破音、すなわち無開放のpである[p˥]との誤りであると考えられます。よって、[ʔ]の実現は不安定であると考えられ、特に/ʔ/を音素としてたてる必要はありません。