東京外国語大学言語モジュール

解説


中国語の子音には清音と濁音の区別がなく,その代わりに「有気音」と呼ばれる呼気をともなった音と「無気音」と呼ばれる呼気をともなわない音の区別があります。有気音と無気音は異なる子音ですのでしっかり発音し分けて下さい。ピンインではp,t,k,q,ch,cが有気音で,b,d,g,j,zh,zが無気音です。

まずpaで有気音の説明をします(声調は考慮しないことにします)。ひそひそ話のように声をたてずに「パー」と長く言ってみましょう。長く伸ばしているときは「ハー」のような息の音が聞こえます。その音を自分の耳で確認したらそのまま続けて「アー」と声を出します。これを早く言えばpaの発音になります。しかしどんなに早く言っても自分で息の音を確認してから「アー」に移行するようにして下さい。同じ要領で「ターアー,カーアー,チーイー,ツァーアー」と早く言えばそれぞれta,ka,qi,caの発音になります。但しqiで「チー」と長く伸ばしているときは,息の音ではなく声をたてない「シー」という音になっています。

次にbaで無気音の説明をします。無気音は要するに有気音の息の音をなくせばよいのですが,そのためにはいったん喉を詰めて発音するのが有効です。まず「ハッ」と言って(声はたててもたてなくてもかまいません)そのまま息を止めていて下さい。このとき喉を詰めたままにしていて下さい。この状態で唇を閉じ,それから勢いよく「アー」と声を出します。声を出すときは喉を詰めません。「パー」を言うつもりではなく,声を出す勢いで自然に唇が開く感じです。うまくできないときは親指と人差し指で無理やり唇をつまんでおくのもよいでしょう。この感じがつかめたら,同じ要領でいったん喉を詰めてから「ター,カー,チー,ツァー」と言えばそれぞれda,ga,ji,zaの発音になります。

日本語との対比: 日本語のカ行,タ行,パ行の子音は語頭では若干呼気をともないますが,中国語の有気音ほど顕著ではありません。但し促音の「ッ」の後では呼気をほとんどともなわず,中国語の無気音にかなり近くなります。例えば「真っ赤」の「カ」,「買った」の「タ」,「ラッパ」の「パ」はそれぞれ中国語のga,da,baに近似しています。これは促音を言うときに喉を詰めるからでしょう。