東京外国語大学言語モジュール

解説

   疑問文イントネーションの文末上昇は単語のアクセントを保持したまま、最終拍だけを急に上昇させます。単語のアクセント型を崩したような発音では、たいへん不自然に聞こえます。例えば、「あなたですか?」という意味で、「あなた?」と疑問文イントネーションでいう時でも、「低高低」という中高型アクセントのパターンは崩れません。疑問文の最終拍の「た」だけがいったん低く下降してから再び上昇するパターンになります。英語などの疑問文のように文末にかけて上昇していくイントネーションは、日本人には「低低高」のように聞こえ、日本人の耳には違和感があります。
   次の図は音の高さを曲線で表示したものです。平板型の「開ける」と中高型の「食べる」の例です。左側が平叙文「開ける。」「食べる。」で、右側が疑問文「開ける?」「食べる?」です。



   「開ける」の「あけ」の部分、「食べる」の「たべ」の部分の高さの変化のパターンは、平叙文と疑問文でほとんど同じですが、最後の「る」の部分では疑問文の曲線の方に急上昇が見られます。さらに、疑問文の曲線を比べると、「開ける?」の「る」の部分は、下降することなく上昇していますが、「食べる?」の「る」は一回下降してから上昇するという形になっているのを確認してください。「低高低」という中高型アクセントのパターンは崩れません。
   アクセント型を崩さない上昇のパターンが習得できたら、最終拍の上昇の角度や幅に気をつけましょう。最終拍の上昇が遅くて緩やかな場合は、他人の言葉を深く疑っているように聞こえることもありますので、気をつけましょう。