東京外国語大学言語モジュール

解説

次の2つの単語をクリックして聴きくらべてみてください。その際,下線部の音に注意して聴いてみてください。

beten 祈る Betten 「ベッド」の複数形

長さだけではなく,同じ[エ]の音でも若干違う音のように聞こえた方は,耳の感覚の鋭い方です。2つの単語の中にある[エ]の音が違って聞こえるのは,ドイツ語に口の開け方が狭い[エ]と広い[エ]の2種類があるからです。beten の下線部の e は,やや[イ]に近い[エ]に聞こえましたね。この e は狭い[エ]で,[イー]と言うときのように唇を横に引っ張りながら[エー]と言うと出せます。
それに対して Betten の下線部の e は広い[エ]で,日本語の[エ]の音と同じか,もう少し口を大きめに開いて出される音です。では,次の単語をクリックし,お手本の真似をして発音の違いを確かめてみましょう。


1. A. stehlen(盗む) B. stellen(立てる)
2. A. den(それを) B. denn(というのは)
3. A. wen(だれを) B. wenn(もし)
4. A. Kehle(のど) B. Kelle(ひしゃく)

ä と綴る音も広い[エ]です。単語をクリックし,お手本の真似をして発音してみましょう。 ä には長い場合と短い場合があります。

1. spät(遅い)
2. Käse(チーズ)
3. Mädchen(女の子)
4. kräftig(力強い)
5. Äpfel(りんご,複数形)

最後に注意しておきたいのは,最初に発音を聞いた beten や Betten の語尾に現れる e です。この[エ]は狭い[エ]でも広い[エ]でもなく,あいまい母音と呼ばれる音で,口の中のちょうど真中あたりで出されます。口のあたりから力を抜いて[エ]と言うとこの音になります。アクセントが置かれることのない母音で,場合によっては消えてしまうくらい弱く発音されることもあります。