東京外国語大学言語モジュール

6.4.2. 声調調和
 音節が単独で発音されないとき,つまり複音節語の語末以外の音節であるか,あるいは複音節語の語末の音節でも,文中にあるときには,声調は一般になだらかに平滑化されます。これを「声調調和」と言います。したがってラオス語文を聴いていると,声調の高低の差があまり感じられないかもしれません。
 
 例えば,ある音節が「上昇調」という上がる声調であっても,後続音節が高い音節から始まらない場合は,声調は上がりきりません。逆に,ある音節が「下降調」という下がる声調であっても,後続音節が低い音域から始まらない場合は,声調は下がりきりません。特に,平音節で,本来単独では「上昇調」になるはずの声調は,後続音節の声調に関係なく「低平調[22]」になります。
 下例で見てみましょう。単音節語で,「上昇調」の声調がある「背中」と,二音節語で,「背中」と同じ本来「上昇調」の声調であるはずの第一音節の後に後続音節がある「屋根」をあげると,次のようになります。
 
ຫຼັງ      /lǎŋ/ [laŋ25 ]「背中」
ຫຼັງຄາ   /lǎŋkháa/ [laŋ22 kháa34 ]「屋根」