東京外国語大学言語モジュール

2.4. 方言
 ラオス国内のラオス語と東北タイのラオス語はもちろん,ラオス国内におけるラオス語も,地域差,すなわち方言差は全体としてとても著しいということができます。各地域のラオス語は,ラオス人同士でもわからないことがあるようで,同音異義語を利用した笑い話があったりします。
 そもそもラオスには「〜方言」という言い方自体があまり一般的ではなく,普段は「(県名・村名)の発音」という言い方をします。
 ラオス国内における方言の分布状況と各方言の特徴については未だ明らかにされておらず,その詳細は今後の調査を待たなければなりません。聴覚印象は,一般に,北方言は,聞いた感じが優しく,口調もゆっくりして,南方言は,対照的に口調が速く,きつい感じがすると言われています。
 例えば,「どこ」という語を例にとっても次のようにいろいろあります。
 
例)「どこ」
ルアンパバーン [/sãɯ/ ](高いところから下がってその後少し上がる声調)
サムヌア        [/sǝ̌ǝ/ ] (高いところから下がってその後少し上がる声調)
ヴィエンチャン  [/sǎy/ ] (低いところから上がる声調)
チャンパーサック [/sây/ ] (高いところから下がる声調)
セーコーン   [/sidǝ̌ǝ/ ](si はごく普通の高さで,dǝ̌ǝは低いところから上がる声調)
 
 さらに最近では,タイ語の語彙がマスメディアを通じて急速に流入している状況にあり,その結果,地域差の他にそれを採り入れる若年層とそうでない年配層との間に世代差も生じてきています。