東京外国語大学言語モジュール

解説

 ポルトガル語には鼻母音と呼ばれるものがあります。ア,イ,ウ,エ,オといった(口)母音の発音では,口の奥にある鼻への通路は閉じられ,息が鼻へ漏れることはありません。ところが,日本語で「んーんー」などという時には,この通路が開かれ,息が鼻へ流れる状態になります。この状態で,ア,イ,ウ,エ,オと発音すると,「ンアン,ンイン,ンウン,ンエン,ンオン」に近い,息が同時に口からも鼻からも流れる状態で発音される音になります。これが鼻母音です。鼻母音は「息が同時に鼻からも漏れている」だけですから,「アン」とは違い,いくらでも長く引き伸ばすことが出来ます。ためしに,「ンアー...」といって見ましょう。鼻の下に指をあててちょっと生暖かい息が漏れていれば鼻母音は合格です。
ポルトガル語にはそれぞれ「ア,イ,ウ,エ,オ」が鼻母音になった[ ],[ ],[ ],[ ],[ ]の5つの(単)鼻母音があります。鼻母音を発音記号で表すには母音字の上にティルtil(~)と呼ばれる記号をつけて示します。(見慣れない発音記号のは[ア]が鼻母音になったときのややこもったような発音を表します。)
綴り字ではãというのも用いられますが,am, an, im, in...のように母音字の後にmやnを添えて鼻母音を示します。別な言い方をすればm, nの後に母音字が続かない時は,これは鼻母音を表す記号であると考えておいてください。