東京外国語大学言語モジュール

4.1. 定冠詞/l-/の同化
 アラビア語の定冠詞/l-/は,舌先を歯茎につけて発音される音です。そのため,舌先を歯や歯茎につけて発音される子音が後続した場合は,発音しやすくするために,/l-/を後続する子音と同化させて発音します。
 
   /l-ʃams/ → /ʃ-ʃams/
شمس /ʃams/ (不特定の)太陽
الشمس /ʔaʃ-ʃams/ (特定の)太陽
 現代標準アラビア語で,定冠詞/l-/が同化する子音は以下のとおりです。なお,/j/は舌先を使って発音されますが,定冠詞/l-/と同化しません。これは,歴史的に/j/の音の調音点が,歯茎よりも後ろであった名残りであると考えられます。
 
歯茎
後歯茎
破裂音
t
d
k
 
(口蓋垂化音)
 
 
摩擦音
θ
ð
s
z
ʃ
(口蓋垂化音)
 
ð̩
 
 
 
破擦音
 
 
 
 
 
(j)
はじき音
 
 
 
r
 
 
側面接近音
 
 
 
l
 
 
接近音
 
 
 
 
 
 
鼻音
 
 
 
n
 
 
 
歯茎
後歯茎
破裂音
ت
د
ك
(口蓋垂化音)
ط
ض
摩擦音
ث
ذ
س
ز
ش
 
(口蓋垂化音)
ظ
ص
(ج)
破擦音
はじき音
ر
側面接近音
ل
接近音
鼻音
ن
  /ʃams/「太陽」の/ʃ/に代表されるように,定冠詞/l-/が同化する子音を,アラビア語学では太陽文字と呼んでいます。