東京外国語大学言語モジュール

1.3. フランス語の歴史
フランス語は、話ことばのラテン語が先住民族のケルト人や、後に侵入してきたゲルマン人の影響を受けながら、独自の進化をとげつつ形成されたと考えられますごく簡単にフランス語の歴史について説明しておきましょう。
南フランスでは早くからローマ文化が受容され、話ことばのラテン語は書き言葉のラテン語に比較的近い形で保持されました。これに対して北フランスでは、ゲルマン語などの影響によって、話しことばのラテン語は独自の進化を遂げました。こうして少なくとも6-7世紀には、フランスは言語的に大きく南北に二分されたようです。中世には、北部のフランス語はオイル語、南部はオック語と呼ばれ、二つの異なる言語として意識化されました。
19世紀になると、イタリアの言語学者によって、オイル語とオック語の両方と言語特徴を共有する第3の言語、フランコプロヴァンス語の存在が提唱されました。これらの3つの語圏はさらに、共通の特徴を持ついくつかの方言地域に分けられます。しかし、現在のフランスでは、標準フランス語の普及により、一部の地域を除いて方言は衰退の一途にあります。 現在フランス国外で母語もしくは第二言語として話されているフランス語も、併用される他の言語の影響(例えば、カナダでは英語、アフリカではアラビア語やベルベル語など)や言語的孤立(米国ルイジアナ州など)によってそれぞれ固有の特徴を持つに至り、現在も変化を続けています。

[参考文献]
リカード、P. (1995) 『フランス語史を学ぶ人のために』 伊藤忠夫、高橋秀雄訳,世界思想社.
Lodge, R. Anthony (1993) French from dialect to standard, Routledge.
Perret, Michèle (1998) Introduction à l'histoire de la langue française, 2e édition revue, SEDES.