東京外国語大学言語モジュール

解説

ロシア語の子音は34個ありますが,子音を表す文字は21個しかありません。その理由は34個の子音のうち24個が,「硬子音」・「軟子音」というペアをつくっていて,各ペアに1つの文字しか与えられていないからです。
1.1で,ロシア語の母音は5つしかないのに,母音を表す文字は10個あり,硬母音字と軟母音字という2つの系列があると述べたことを思い出してください。硬子音は,子音字の後に硬母音が綴られるか,子音の前ないし語末ならば後に何も綴られないことによって表されます。それに対して軟子音は,子音字の後に軟母音字が綴られるか,子音の前,ないし語末ならばь(軟音記号)が綴られることによって表されます。例えば,таや-т は硬子音を表しますが,тя や-тьは軟子音を表します。
さて,今まで「硬子音」,「軟子音」と何の説明なくお話しをしてきましたが,硬子音,軟子音とは一体どのような音なのでしょうか。硬子音をいわば「普通の子音」とすると,軟子音は「イの音色を帯びて発音される子音」のことを指します(硬子音はそのような音色を帯びずに発音される子音です)。日本語には「拗音(ようおん)」という音のグループがあり,マに対してミャ,ナに対してニャ(ミャ,ニャが拗音)という対立があります。直感的に分かりやすいように,この日本語の拗音の発音を,ロシア語の軟子音の発音と考えてみましょう。日本語のミャ,ニャを発音してみて下さい。マ,ナを発音する時より舌が上あごの方に盛り上がっているのがお分かり頂けると思います。ロシア語の軟子音も同じように,舌を上あごの方に盛り上げて発音します。子音にイの音色を帯びさせるのが,この舌の盛り上げです。
なお,以下の練習問題で使われている単語の母音の上には ´ という記号がついていることがありますが,これは1.5で説明するアクセント記号です。