東京外国語大学言語モジュール

解説

(1) 有声音化

2.1の有声音化は1つの単語における有声音化でしたが,ここでは隣り合った2つの単語の間で起こる有声音化について見てみましょう。まず,下の例を見てください。

빨리 주세요.
早く 来て ください。

朝鮮語には,単語と単語の間は離して書く「分かち書き」があります。分かち書きされた単語1つ1つをゆっくり,ポーズを入れて発音すると,「 세요」の「주」は無声音として発音されます。しかし,実際に話すときは,「와」(来て)と「주세요」(ください)は1つの単語のように続けて一気に発音し,「 세요」の「주」が有声音として発音されます。つまり,2つの単語を続けて発音すると,2つ目の単語の平音 [ㅂ][ㄷ][ㄱ][ㅈ] はあたかも語中にあるかのように認識され,有声音(濁った音)として発音されるわけです。

とりわけ,次の1),2) ,3) は実際の会話では前の単語に続けて,4),5) は後ろの単語と続けて一気に発音する傾向が強いものです。そうした場合,平音 [ㅂ][ㄷ][ㄱ][ㅈ] は有声音化が起こります。

1) 보다(…してみる),주다(…してやる),버리다(…してしまう)などの補助用言
2) 것/거(もの),적(とき)などの不完全名詞
3) 권(…冊),달(…月)などの名数詞
4) 이(この),그(その),저(あの),어느(どの)など,冠形詞
5) 用言の否定の副詞안(…しない)

さらに,挨拶ことばでも2つの単語を一気に言い,あたかも1単語のように発音することがあり,2つ目の単語の平音が有声音化します。

1) 안녕히 (さようなら) 안녕히 (さようなら)