東京外国語大学言語モジュール

Step2 : 動詞serの直説法現在

   ポルトガル語では主語代名詞も含め,動詞の主語は省略されることが出来ます.動詞の変化形に主語の人称に関する情報が含まれているので,語形や文脈から意味が明らかな場合は,対比,強調などを除いて,主語代名詞は省略されるのが普通です.
Sou brasileiro.
(私はブラジル人です)
Somos brasileiros.
(私たちはブラジル人です)
Eles não são portugueses.
(彼らはポルトガル人ではありません)
A senhora é inglesa?
(あなたはイギリス人ですか?)
   ポルトガル語の,英語のBE動詞にあたるものがserとestarです.この2つは使い分けられ,estar は一時的な状態や場所を表し,ser は比較的変わらない性質を表現します.
Hoje ele está cansado.
(今日,彼は疲れている)
Ela está em casa agora.
(今,彼女は家にいる)
O Gilberto é um homem alegre.
(ジルベルトは陽気な(性質の)男だ)
   serとestarを入れ替えることで,意味が変わる場合もあります.
Esta cerveja é boa.
(このビールはおいしい)
Esta cerveja está boa.
(このビールは飲み頃だ)
   建物などの所在を示す場合にはserとestarの両方が可能です.
O cinema está ao lado do teatro.
(その映画館は劇場のとなりにある)
O cinema é ao lado do teatro.
(その映画館は劇場のとなりにある)
   一般に,ポルトガルのポルトガル語では,建物などに関しserを使うほうが多く見られます.一方,ブラジルの標準的な話し言葉では動詞の2人称単数形は用いられません.初級文法書などには「ブラジルではtuは用いられない」と説明されていますが,実際に使用されないのは動詞の変化形で,代名詞のtuのほうは,親しい関係にあるものに対して広く用いられます.しかし,動詞の形は3人称単数形です.
Tu não vem comigo?
(君は僕と来ないの? (=Tu não vens comigo?))
João, tu está aqui?
(ジョアン,ここにいるの? (=João, você está aqui?))
規範文法的には「誤った」形ですが,ブラジルでは広く普及している言い方です.ただし,ポルトガルのポルトガル語ではそのような「誤用」は起こりません.