東京外国語大学言語モジュール

同位成分の接続(4) 累加

同位成分の累加の表現
 
  同位成分の累加は、「AだけではなくBも」というように、該当する同位成分を数えあげていく表現です。
 
  モンゴル語の同位成分の累加は、さまざまな接続形式を使って表しますが、これには、語幹に直接接続するものと、接続表現が独立しているものとがあります。
  以下の説明では、いずれも同位成分をA・Bで示します。
語幹に直接接続するもの
 
  次のような接続形式を語幹に接続することによって、同位成分の累加を表すことができます。
 
      【A 語幹-аар үл барам【B:さまざまな格
 
      【A 語幹-аар барахгүй【B:さまざまな格
 
  これらは、日本語の「AだけではなくBも」に相当します。
  多くの場合、Bのあとには「Bさえ」という意味を強調する助詞 ч が置かれます。
 
      Хонины ноосоор үл барам,  ноолуур ч экспортлож байна.  ウールだけではなく、カシミアさえ輸出しています。
      Хонины ноосоор барахгүй,  ноолуур ч экспортлож байна.  
 
  否定文の場合も構文上の違いはありませんが、否定の対象としてふつうは考えにくいものをBとする強い否定の表現になります。
 
      Тухайн үед боловсролын тогтолцоогоор барахгүй, жижиг дэлгүүр ч байсангүй.  当時は、教育制度ばかりか小さな商店さえ存在しませんでした。
接続形式が独立しているもの
 
  次のような接続形式ををAのあとに置くことによって、同位成分の累加を表すことができます。
  Aの格はいずれも、「主格またはBと同じ格」になります(これを※で示します)が、話者によってゆれが見られる場合も少なくありません。
 
      【A】  төдийгүй, 【B:さまざまな格  
 
      【A】  төдий биш, 【B:さまざまな格
 
      【A】  байтугай, 【B:さまざまな格
 
      【A】  битгий/бүү хэл,  【B:さまざまな格
 
  最後のふたつの表現はややくだけたスタイルで用いられます。
 
  これらはいずれも、日本語の「AだけではなくBも」・「AどころかBも」・「AはいうまでもなくBも」などに相当します。
  多くの場合、зөвхөн 「単に」、мөн 「おまけに」(төдийгүй と共起しやすい)、харин 「一方」(төдий биш と共起しやすい)、түүнчлэн 「そればかりか」といった副詞や、Bのあとに置かれて「Bさえ」という意味を強調する助詞 ч が一緒に使われます。
 
  以下の例では、AがBと同じ格をとった場合で示します。
 
      Зөвхөн их дэлгүүрээс төдийгүй, мөн төв захаас ч олдсонгүй.  デパートだけではなく中央市場でさえ手に入りませんでした。
      Сүмогийн нэвтрүүлэг зөвхөн Улаанбаатарт төдий биш, харин хөдөө орон нутагт ч гардаг.  大相撲中継は、ウランバートルだけではなく地方でも放送されています。
      Казахстан руу Улаанбаатараас байтугай Өлгийгөөс ч нислэгтэй.  カザフスタンへは、ウランバートルどころかウルギーからでも航空便があります。
      Манай аав архинд битгий хэл, пивонд шууд халчихдаг.  うちの父は、モンゴルウォッカどころかビールでもすぐに赤くなってしまいます。
 
 
  一方、「AもBも」という単純な累加を表す次の表現もあります。この場合は、AはBと同じ格になります。
 
      【A:Bと同じ格  ч, 【B:さまざまな格  ч
 
     Багш намайг ч Амрааг ч хамт загинасан.  先生は私もアムラーも一緒に叱りました。