東京外国語大学言語モジュール

造格の形

 

      Г交代語幹を持つものは語幹が交代したうえで；

      【語幹-аар】

 

  形がよく似ている奪格の場合とは違って Н交代語幹への交代が行なわれないことに注意してください。

 

      語幹 гар 「手」 ： ＋аар → гараар

      語幹 ам 「口」 ： ＋аар → амаар   

      Г交代語幹 санг 「基金」 ： ＋аар → сангаар

      Г交代語幹 шууданг 「郵便」 ： ＋аар → шуудангаар

造格の意味と機能

 

  造格をとった名詞類は、述語に対する次のような関係を表示し、述語の動詞の意味によって補語成分や状況語成分になります。ここでは、格語尾をとる名詞類を【Ｎ】で表します。

 

【名詞類＋造格語尾】
意味役割		例  （他の補語の部分は省略）
道具	【Ｎ】を使って	үзгээр  бич- тосон будгаар  буд-	ペンで書く ペンキで塗る
手段	【Ｎ】によって	онгоцоор  яв- тусламжаар барь- Монгол хэлээр  ярь-	飛行機で行く 援助で建設する モンゴル語で話す
原材料	【Ｎ】を原材料として	модоор  барь- ноолуураар  хий-	木で建てる カシミアで作る
通過点	【Ｎ】を通過して  【Ｎ】で何らかの行為を行なって	гудамжаар  яв-Бээжингээр  дамж- хоолны газраар  ор-	通りを通る 北京を経由する 食堂に入る
幅のある時間	【Ｎ】のころに  【Ｎ】という期間で	сарын сүүлээр  яв- 3 жилээр  ажилла-	月末のころに行く ３年のあいだ働く
抽象的な場	【Ｎ】の席で  【Ｎ】の場で	оройн хоолоор  уу- хурлаар  шийд-	夕食の席で飲む 会議の場で決める
立場	【Ｎ】という立場で	багшаар  ажилла- даргаар  сонго-	教師として働く 長として選ぶ
価格	【Ｎ】という価格で	20 доллараар  ав-	20ドルで買う
行為の単位	【Ｎ】という単位で	200 төгрөгөөр  буур-	全員で行く 200T  下落する

 

  通過点を表す意味役割は、上に通過点の例として挙げたうちの３番目のものは、単に与位格（ただし省略される）で表した場合とは次のような違いがあります。

 

      Хоолны газар   орлоо.  食堂に入った。（単なる空間的帰着点を示す）

      Хоолны газраар орлоо.  食堂に入った。（その場に滞在して食事というをして出てきたことまで含意する） 

 

  日本語話者にはなかなか発想しにくい意味役割もありますが、造格はモンゴル語では非常に広範に使われ、モンゴル語らしい表現のためには不可欠な格です。