東京外国語大学言語モジュール

文の構造

1)文の基本語順「主語+述語+補語」の例文を見てみましょう。
(1)ຂ້ອຍຮຽນພາສາລາວ
(私+勉強する+ラオス語=私はラオス語を勉強する。)
となります。語形変化もしなければ、助詞もないことがわかるかと思います。
補語を必要としない動詞の場合は、「主語+述語」ですから、
(2)ຂ້ອຍຕື່ນນອນ
(私+起きる=私は起きます。)
となります。
 
2)述語の前に置かれていれば主語なので、主語は名詞であるとは限りません。つまり下記のように、動詞(句)でも主語になります。
(3)ຍ່າງໄວ
(歩く+速い=歩くのが速い。)
(4)ຮຽນພາສາລາວມ່ວນ
(勉強する+ラオス語+楽しい=ラオス語の勉強は楽しい。)
例えば上の(3)は「歩く」が主語、「速い」が述語、(4)は「ラオス語を勉強する」が主語、「楽しい」が述語です。
 
3)数量や時、場所を表す副詞句を置くときには、原則として補語の後ろに置きます。
(5)ຂ້ອຍຮຽນພາສາລາວຫຼາຍ
(私+勉強する+ラオス語+とても=私はラオス語をとてもよく勉強する。)
(6)ຂ້ອຍຮຽນພາສາລາວຕັ້ງແຕ່ມື້ອື່ນ
(私+勉強する+ラオス語+明日から=私はラオス語を明日から勉強する。)
(7)ຂ້ອຍຮຽນພາສາລາວຢູ່ເຮືອນ
(私+勉強する+ラオス語+家で=私はラオス語を家で勉強する。)
4)品詞論にこだわる必要はあまりないと言いましたが、(7)に出てきた「ຢູ່」を例にとって考えてみましょう。
(8)ຂ້ອຍຢູ່ໂຕກຽວ
(私+いる+東京=私は東京にいる。)
(9)ຂ້ອຍເກີດຢູ່ໂຕກຽວ
(私+生まれる+〜で+東京=私は東京で生まれた。)
上の8)9)の文とも「ຢູ່」は所在を表す語彙であることは間違いないのですが、品詞で言えば、前者は「いる」という「動詞」、後者は「~で」という「前置詞」となってしまいます。品詞にこだわる必要はあまりないと述べたのは、このように一つの語にいくつもの品詞を与えなければいけないという問題が起きるからです。

従ってラオス語の場合、「品詞」という観点から語彙や文の構造を考えることは、必ずしも有効な枠組みであるとは言えません。