東京外国語大学言語モジュール
Step3 : 話しことばの特徴
(1) 不定冠詞複数形 des（→カード7）
Si vous êtes des fidèles auditeurs de France-Inter... （France-Interの放送から）
(もしあなたがフランス・アンテールの忠実な視聴者なら・・・)
本来ならば、de fidèles auditeurs となるべきところです。
(2) 主題文 C'est（→カード13）
C'est des papiers qu'il faut signer.
(それはサインをしなければならない書類です。)
話しことばでは、C'estの後ろに複数名詞がきます。
(3) 否定 ne（→カード19）
C'est pas possible ! （→カード13）
(まさか！)
Mais c'est pas normal, cette décision ! （→カード106）
(それにしても普通じゃない、その決定は！)
よく指摘される現象で、否定のne... pasが、pasだけになります。この文法モジュールでも上の例文が出てきました。とくに動詞がavoir, être, pouvoirの場合に、neが脱落することが一般的です。
(4) 疑問文（→カード24）
Tu va où? / Où tu vas? （Où tu vas? のほうがくだけた言い方です）
(どこへ行くの？)
疑問文のところでも述べましたが、倒置型が最も書きことば的で、イントネーション型が最も中立的です。しかしながら、さまざまな言語調査により、話しことばではイントネーション型の頻度が最も高いことが立証されています。
(5) 主語のon（→カード31）
Nous, on habite dans ce quartier.
(私たちは、この地区に住んでいます)
話しことばで、しばしばnous「私たち」の意味で用いられますが、強勢形のnous（→カード43）はonにはなりません。ですから、話しことばでは上のような言い方をよく耳にします。
(6) 副詞très（→カード34）
J'ai très chaud et très soif.
(とても暑くて、喉が渇いた)
Vous ferez très attention aux voitures. （→カード５６）
(車によく気をつけてください。)
très は標準的なフランス語では、形容詞や副詞を修飾しますが、話しことばでは上のような言い方に出くわします。
(7) 中性指示代名詞ça
Cette maison, ça a été construit il y a un an. （テレビTF１の例）
(この家は、一年前に建設されました)
話しことばでは、前に出てきた名詞を、ilやelleではなく、中性のçaで受けることがよくあります。ちなみに中性代名詞であるため、女性名詞のmaisonを主語とする受身文ですが、過去分詞の一致(女性形construite)が起きていません。
(8) 前置詞avec, pour
- Tu as un IPod ? Viens avec demain !
(IPod を持ってる？ 明日持って来なさい！)
カード84で学んだavantやaprèsだけでなく、他の前置詞まで副詞のように独立して用いられます。
(9) 不定名詞 chaque（→カード95）
Ces cahiers coûtent trois euros de chaque.
(これらのノートはどれも３ユーロです)
カード95で、Ces cahiers coûtent trois euros chacun.「これらのノートはどれも３ユーロです。」という文を学びましたが、話しことばではしばしば次のようになります。
(10) 過去分詞の一致（→カード78の解説、カード99の解説ステップ3）
La lettre que vous m'avez écrit...
(あなたが私に書いたその手紙・・・)
上のことばはある小説家のことばです。標準的なフランス語では、vous m'avez écriteと過去分詞が女性形になります。
(11) 語順（→カード106）
Je lui ai offert un joli cadeau, à Denise.
(私はかわいいプレゼントをした、ドゥニーズに)
Denise, je lui ai offert un joli cadeau.
(ドゥニーズに、私はかわいいプレゼントをした)
これについてはカード106で詳しく見ましたので、そこに述べられていない点だけを加えておきましょう。話しことばでは、しばしば主語や直接目的語が文頭や文末に移動するわけですが、間接目的語も同じように移動しますが、文頭に移動したときは前置詞àが脱落します。