東京外国語大学言語モジュール

9. 音声の多様性
 以上,ラオス語の発音について述べました。けれども実はラオス語の音韻体系および音声学的特徴については,現在でも揺れていて、日々変化しています。
 例えば,長母音から短母音へ移行する語が挙げられます。さらには発音が変化するにつれ,正書法も変わっていくのです。つまり,長母音から短母音へ発音が移行するのに伴い,文字も長母音字から短母音字に変わっていく語があるのです。例えば,
 
     ຍູງ     →   ຍຸງ     /ɲúŋ/   「蚊」
     ເທີງ    →  ເທິງ    /thǝ́ŋ/  「~の上」
 ຍຸງ
ເທິງ~の上
 もう一つは声調が変わる例が挙げられます。なかでもタイ語の影響を受けて,声調もタイ語的な声調に変化し,それに伴って声調記号も変わってしまいます。例えば,
 
   ເລື່ອຍໆ    → ເລື້ອຍໆ  /lɯ̂ay lɯ̂ay/ 「ずっと」
ເລື້ອຍໆずっと
 
 このようにラオス語においては,発音の変化と共に正書法もそれに柔軟に対応するべく変化する,ということが見受けられます。これも特徴の一つであるということができるでしょう。ラオス語の発音の変化,それに伴う正書法の変化はしばらく続くと思われ、今後の変化を注意深く見守っていく必要があります。