東京外国語大学言語モジュール

動詞の重ね型

1.動詞の重ね型の文法的意味と表現意図
 動詞の重ね型は,動作の時間や回数が少量であることを表します。
 また,動作の時間や回数が少量であるということから,「ちょっと~する」というように,語気を和らげるために用いられます。行なう動作が少量であるということは,主語がその動作に対して気軽に取り組めるという意図が働き,動作主の動作に対する気軽な・気楽な取り組みを表すためにしばしば用いられます。
他病了,我们去看看他吧。
(彼は病気になったので,彼をちょっと見舞いに行きましょう。)
[Tā bìng le, wǒmen qù kànkan ba.]
这个问题需要考虑考虑。
(この問題はちょっと考えてみる必要がある。)
[Zhèige wèntí xūyào kǎolǜkaolü.]
她想了想说:“还是你去吧!”
(彼女はちょっと考えると「やはりあなたが行ってよ」と言った。)
[Tā xiǎnglexiang shuō:“Háishi nǐ qù ba!”]
 またそこから,「ちょっと~してみる」と気軽に試してみる意味も生まれます。
这个收音机坏了,不信你听听。
(このラジオは壊れた,信じないならちょっと聴いてみてごらん。)
[Zhèige shōuyīnjī huài le, bú xìn nǐ tīngting.]
这个菜怎么样,尝尝就知道了。
(この料理はどうか,味をみてみればわかる。)
[Zhèige cài zěnmeyàng, chángchang jiù zhīdao le.]
 命令文では相手の動作を少量にしたほうが相手の負担が軽減されることから,動詞の重ね型を用いて語気を和らげたほうが,丁寧な言い方になります。普段の日常的な動作に対して動詞の重ね型が用いられると,気軽に「~したり~したり」という意味を表します。
我的钥匙不见了,你帮我找找!
(私の鍵がなくなりました,探すのを手伝ってくれませんか。)
[Wǒ de yàoshi bú jiàn le, nǐ bāng wǒ zhǎozhao!]
王老师,您休息休息吧!
(王先生,ちょっと休まれればいかがですか。)
[Wáng lǎoshī, nín xiūxixiuxi ba!]
早晨起来跑跑步,做做操,对身体有好处。
(朝起きてジョギングしたり,体操したりすると,体によい。)
[Zǎochén qǐlai pǎo pao bù, zuò zuo cāo, duì shēntǐ yǒu hǎochu.]
2.動詞の重ね型の形式上の特徴
(1)形態上・発音上
1音節動詞AはAAに,2音節動詞ABはABABになります。2つ目の動詞の部分は軽く発音されます。
 
(2)挿入成分
 已然の事態の場合は,しばしば中間にアスペクト助詞“了”を挟み,“A了A” “AB了AB”の形になります。
  他试了试就买下来了。(彼はちょっと試してから買った。)
  今天我休息,在家收拾了收拾房间。
  (今日は私は休みで,家で少し部屋の片付けをした。)
 
 また,重ね型の中間に“一”を挟んで“A一A”と言うこともあります。この場合の“一”は軽声“yi”です。ただし2音節動詞の場合は中間に“一”を挟むことはできません。
  你叫他在外边儿等一等。
  (彼に外でちょっと待っておくように言いなさい。)
 
(3)連用修飾語
 特にまだ起こっていない未然の出来事について動詞の重ね型を用いる場合,語気を和らげるという表現意図が前面に押し出され,動作の「少量」を表すという本来の文法的意味はいわば背景化するため,時間が長い意味を表す連用修飾語とも共に用いることが可能です。
  看看(たくさん見る)
  好好儿想想(よく考えてみる)