○基本
接頭辞 meN- は、語根(=辞書の見出し形)の性質に応じて、mem-、men-、meny-、meng-、me-、menge- の6つの形に変化します。meN- の形を決定する語根の性質は、まず「語根の音節数」、次に「語根の最初の音」の2点です。
・語根が1音節の場合:menge-
・語根が2音節以上の場合:語根の最初の音による
1. p, b, f, v(唇を使う音):mem-
2. t, d, c, j, z, sy(歯茎を使う音):men-
3. s:meny-
4. k, g, h, kh, gh, 母音(口の奥を使う音):meng-
5. l, r, m, n, ny, ng, w, y(よく響く子音):me-
・ptsk脱落規則:語根が2音節以上で最初の音が p、t、s、k の場合、meN- の付加に伴い、p、t、s、k が消えます。
接頭辞 meN- の形の変化(*は消える音)
音節数 | 最初の文字 | meN- | 例 |
---|---|---|---|
2音節以上 | b | mem- | membeli (beli)「買う」 |
f | memfitnah (fitnah)「中傷する」 | ||
v | memvideokan (video)「ビデオに撮る」 | ||
*p | memakai (pakai)「着る;使う」 | ||
d | men- | mendengar (dengar)「聞く」 | |
c | mencari (cari)「探す」 | ||
j | menjual (jual)「売る」 | ||
z | menziarahi (ziarah)「訪れる」 | ||
sy | mensyaratkan (syarat)「条件とする」 | ||
*t | menanam (tanam)「植える」 | ||
*s | meny- | menyapu (sapu)「掃く」 | |
g | meng- | menggosok (gosok)「こする、磨く」 | |
h | menghantar (hantar)「送る」 | ||
kh | mengkhayal (khayal)「ぼっとする」 | ||
gh | mengghairahkan (ghairah)「欲望を掻き立てる」 | ||
a | mengambil (ambil)「取る」 | ||
e | mengempukkan (empuk)「柔らかくする」 | ||
é | mengelak (elak)「避ける」 | ||
i | mengikat (ikat)「結ぶ」 | ||
o | mengomel (omel)「不平を言う」 | ||
u | mengubah (ubah)「変える」 | ||
*k | mengirim (kirim)「送る」 | ||
l | me- | melihat (lihat)「見る」 | |
r | merokok (rokok)「喫煙する」 | ||
m | memasak (masak)「料理する」 | ||
n | menanti (nanti)「待つ」 | ||
ny | menyanyi (nyanyi)「歌う」 | ||
ng | menganga (nganga)「口を大きく開ける」 | ||
w | mewawancara (wawancara)「インタビューする」 | ||
y | meyakinkan (yakin)「確信させる」 | ||
1音節 | — | menge- | mengecat (cat)「ペンキを塗る」 |
mengeposkan (pos)「投函する」 |
fikir「考える」と faham「理解する」は f で始まりますが、f が消え、memikir、memahami (= meN- + faham + -i)という形になります。これはこれらの語が、口語では pikir、paham となることに由来します。
ptsk脱落規則には、次の3つの例外があり、これらの場合には、p、t、s、k は保持されます。
1.語根が外来語とみなされる場合
memprotes (protes)「抗議する」
mengkaji (kaji)「研究する」
2.語根に接頭辞 per-、ter- が付加されている場合
memperluas (per- + luas)「広げる」
menterbalikkan (ter- + balik + -kan)「ひっくり返す」
3.純粋な例外
mempunyai (punya)「持っている」
menternakkan (ternak)「飼育する」
meN-動詞は、出来事が瞬間的にぱっと起こるようなものでなく、時間的な幅を持って少しずつ実現していくものとして捉えられることを示します。語幹が動詞の場合、meN- の付かない裸動詞と meN-動詞の意味の違いは、微妙なニュアンスの違いとなることが多いです。裸動詞と meN-動詞の意味が大幅に違わなければ、フォーマルな文体では meN-動詞形を用います。くだけた文体では、裸動詞を使うことが多いですが、meN-動詞と裸動詞の意味は同じではないため、meN-動詞も用いられます。
裸動詞と meN-動詞の意味が大きく異なる場合には、必ず使い分けが必要です。
meninggal (dunia) | 「亡くなる」 | tinggal | 「とどまる、住む、残る」 |
mendengar | 「~(の音)を聞く」 | dengar | 「①~(の音)を聞く②~(である)と聞く」 |
membangun | 「発展する」 | bangun | 「起きる、起き上がる」 |
merasa | 「①感じ取る②味見する」 | rasa | 「①感じる②思う」 |
mendatang | 「突然またはよその土地からやって来る」 | datang | 「来る」 |
また、meN-動詞が存在しない場合もあります。例えば、tanya「尋ねる」は bertanya「尋ねる」という ber-形はありますが、menanya という meN-形はありません。ですので、ただ闇雲に meN- を付ければいいというわけでもありません。
語幹が程度のある形容詞、つまり「どのくらい~」のように言える形容詞の場合、meN-動詞は「(だんだん)~になる」という意味になります。
その他の語幹の場合、meN-動詞は語幹と関係した様々な行為を表します。個々に意味を覚えていくのがよいでしょう。
他動詞の meN-動詞は、肯定の命令文では使えません。代わりに、裸動詞を用います。
自動詞の meN-動詞は、命令文での使用制限はありません。
「関係節(1):主名詞がある場合」では、主名詞と関係節の関係について考え、主名詞=主語の場合と主名詞=目的語の場合があることを見ました。meN-動詞は、主名詞=主語の場合には用いることができますが、主名詞=目的語の場合には用いることができません。くだけた文体では代わりに裸動詞を用います。フォーマルな文体ではどうするかについては、「関係節(3):主名詞が目的語の場合」で学習します。
pensyarah <pensyarah mengajar kursus termodinamik>(主名詞=主語)
「<熱力学の講義を教えている>先生」
kursus < pensyarah itu ajar kursus >(主名詞=目的語)
「<その先生が教えてる>講義」
×kursus < pensyarah itu mengajar kursus >