モンゴル語には、「好きな」・「嫌いな」という意味の元々の形容詞や、「好む」・「嫌う」という単純な動詞がなく、前のステップで学んだ所有と欠如の派生接辞から作られる次の派生形容詞で好き・嫌いを表現します。
дур は「欲求」という意味の名詞で、それを所有している状態が「好きな」、欠如している状態が「嫌いな」ということになります。
дуртай ажил 好きな仕事
дургүй хоол 嫌いな料理
派生接辞を接続したあとのこれらの形はあくまでも形容詞ですから、ほかの形容詞と同じように、コピュラ文(措定文)の補語になることができます。もっとも、以前に学習したように、モンゴル語の形容詞は、名詞を修飾するときと措定文の補語になるときとで本質的な違いはありません。
これらの形自身に対する補語「~が(好き・嫌い)」は、与位格になります。
Би пивонд дуртай. 私はビールが好きです。
Манай эхнэр тамхинд дургүй. うちの家内はたばこが嫌いです。
一方、動詞が表す動作・状態が補語となる場合は、非過去の形動詞形によって、派生形容詞となる前の名詞 дур を修飾する連体節の形で表します。
Манай ах гэртээ байх дуртай. うちの兄は家にいるのが好きです。
Багш тамхи татах дургүй. 先生はたばこを吸うのが嫌いです。
この形式は、派生形容詞を作る前の段階で、名詞 дур を被修飾名詞とする連体節を作ったうえで、その連体節の全体に派生接辞を接続した形になっています。その点で、派生接辞によって先にできた形容詞全体が与位格形の補語をとる名詞の場合とは根本的に構造が違います。
名詞の場合
【補語:与位格】 → 【дуртай/дургүй】
動詞の場合
【連体節 -х дур】 + -тай/-гүй
次のような誤りがよく見られますので注意しましょう。
Манай ах гэртээ байхад дуртай. (×)「うちの兄は家にいるのが好きです。」
Багш тамхи татахад дургүй. (×)「先生はたばこを吸うのが嫌いです。」