原因・理由を表す連用節
連用節と主文のさまざまなつながり方のうち、主文の述語の動作や状態に至る因果関係や、主文における判断や態度の理由・根拠を表すのが原因・理由を表す連用節です。
原因・理由を表す連用節は、動詞の副動詞形ではなく、さまざまな接続形式と名詞節用法の形動詞形によって表されます。
接続形式によるもの
現代語では、次のように、原因・理由を表す連用節を作る多くの接続形式が存在します。
以下、動詞文の場合の模式を示しますが、コピュラ文(指定文・措定文)の場合は述語動詞なしで名詞や形容詞などによる補語をそのまま置くことができます。
【連用節 述語:形動詞形】 тул
【連用節 述語:形動詞形】 учир
【連用節 述語:形動詞形】 учраас
【連用節 述語:形動詞形】 болохоор
【連用節 述語:形動詞形】 болох дээр
【連用節 述語:形動詞形】 юм чинь
【連用節 述語:形動詞形】 хойно
これらの構文の場合は、節の述語が独自のテンスを表すことができますが、動詞文の場合、節の述語は必ず形動詞形になるという形の上での制限がありますので、終止形ではなく、自分の表現したいテンスにもっとも近い形動詞形を選択しなければなりません。ただし、テンスを表す終止形の否定の形は元々形動詞形を流用したものですからそのまま使うことができます。
以上の各形式はいずれもよく使われますが、因果関係を表す場合と判断・態度の根拠を表す場合の違いや主文のモダリティとの関係など、細かい研究はあまり行なわれていません。したがって、ここでは、経験的に知られているごく大まかなニュアンスやスタイルを示しておきます。
тулは、やや因果関係寄りで、話し手の主観と関係ない客観的なニュアンスを感じる場合が少なくありません。若干硬いスタイルで使われることが多いのですが、場合によっては必ずしもそうと言い切れない面もあります。
Маргааш өглөө эрт нисэх тул одоо унтлаа. 明日は早朝に飛行機で出発するのでもう寝ます。
учир/учраасはともに名詞 учир 「理由」からできた形で、さまざまなニュアンスで幅広く使われます。口頭による発話では奪格語尾をとった учраас のほうがよく使われます。
Өнгөрсөн өвөл зуд нэг их гараагүй учир малын тоо өссөн. 昨シーズンの冬は雪害がそれほど発生しなかったので、家畜頭数は増加しました。
Билет дууссан учраас өчигдөр орой драм үзсэнгүй. チケットが売り切れたので昨夜は芝居を見ませんでした。
болохоорも広く用いられますが、節の主語と主文の主語と同一の場合には再帰語尾が接続するという違いがあります。
Би Англи хэл мэдэхгүй болохоороо тэр хүнтэй Монголоор ярилаа. 私は英語を知らないのでその人とモンゴル語で話しました。
болох дээрは、болохоорによる形式の変種として、主としてくだけたスタイルで使われます。
Өчигдөр хичээлээ тасалсан болох дээр сая багшдаа загинуулаад хаясан. 昨日授業をサボったんでさっき先生に叱られちゃいました。
юм чинь と хойно はくだけたスタイルでのみ使われます。このうち、хойно は判断の根拠を表す「~以上」に相当します。
Япон хэл ерөөсөө сураагүй юм чинь юу ч ойлгоогүй. 日本語は全然勉強しなかったんで何もわかりませんでした。
Намайг хамт явах хойно та юунд ч битгий санаа зовоорой. 私が一緒に行く以上、あなたは何も心配しないでください。
хойно による形式の節の述語は、まれに終止形になることがあります。
Намайг хамт явна хойно та юунд ч битгий санаа зовоорой. 同
名詞節用法の形動詞形によるもの
名詞節として使われる形動詞形がさまざまな語尾や後置詞をとることで事実上の連用節を作る形式の中には、原因や理由を表すものもあります。
よく使われるものは次のとおりです。
【連用節 述語:形動詞形-аас】 болж
болжは奪格支配の後置詞ですから、後置詞としての用法に準じて「~せいで」・「~ことによって」という客観的な因果関係を表します。
Ноднин бороо ороогүйгээс болж энэ зун ган гачиг гарсан. 昨年に雨が降らなかったせいで今年の夏は干ばつが起こりました。
【連用節 述語:形動詞形-аас】 хойш
この形式も本来は後置詞の形ですが、「~する以上」という判断の根拠を表します。
Нэгэнт суралцахаас хойш онц сайн сураарай. せっかく勉強する以上、優秀な成績をとってください。
【連用節 述語語幹-санаар】
テンスとしては主文よりも前に限られますが、主文のテンスよりも前に起こった出来事による因果関係を表します。
Нимгэн хувцастай гадаа гарснаар ханиад хүрчээ. 薄着で外出したことによって風邪をひいてしまいました。