協同ヴォイス
モンゴル語には、協同ヴォイスと呼ばれる形式があります。
協同ヴォイスは次の補助語幹によって表されます。→【発音と正書法上の注意】
【語幹-лц-】
協同ヴォイスをとった動詞は、動作主がほかの参加者を手伝って行なう動作や状態を表すことが基本です。
Би ахтайгаа хамт хонь гаргалцав. 私は兄と一緒に羊を解体しました。(『兄』を手伝って行なった動作)
Чи миний машиныг угаалцаж өгөөч. 君、私の車を洗ってくれませんか。(『私』を手伝って行なう動作)
手伝う相手が文の中に明示されない場合もあります。
Оюутнууд сангийн аж ахуйд очиж ургац хураалцав. 学生たちは国営農場に行って収穫作業を行いました。
中には、手伝うという意味が希薄で、単にその場に参加することを現す場合もあります。
Сайдын гарын үсэг зурах ёслолд байлцсан. 大臣の署名式に立会いました。
ヴォイスから離れ、新しい語彙的意味を持った動詞を作っているものも少なくありません。これらについては、すでに独立した動詞として覚えてしまったほうが便利です。
сур- 学ぶ・習得する
→ суралц- 教育機関に在籍する
ор- 入る
→ оролц- 参加する
харь- 帰る
→ харилц- 交流する
相互ヴォイス
モンゴル語には、相互ヴォイスと呼ばれる形式があります。
相互ヴォイスは次の補助語幹によって表されます。→【発音と正書法上の注意】
【語幹-лд-】
相互ヴォイスをとった動詞は、動作主がほかの参加者とお互いに行なう動作を表します。
Манай цэрэг дайсантай тулалдав. わが軍は敵と戦いました。(『敵』と相互に行なった動作)
Өчигдөр сургууль дээр Батзултай тааралдсан. 昨日学校でバトゾルと出くわしました。(『バトゾル』と相互に行なう動作)
ほかの参加者がまとめてひとつの主語になっている場合もあります。
Өлзий Батхуяг хоёр зодолдож байна. ウルズィーとバトホヤグが殴り合っています。
Уулзварт 3 машин мөргөлджээ. 交差点で3台の自動車が衝突しました。
協同ヴォイスの場合と同じように、相互ヴォイスをとった動詞の中には、すでに新しい意味の別の動詞になっていると考えたほうがよい例も少なくありません。
ор- 入る
→ оролд- 努力する、いじる
наа- 貼る
→ наалд- くっつく
яв- 行く
→ явалд- 交際する(不倫などマイナスイメージで)
тохио- 起こる
→ тохиолд- 遭遇する
ур- 引き裂く
→ уралд- 競争する
барь- つかむ
→ барилд- 相撲をとる
協同ヴォイスの相互ヴォイスへの乗り入れ
協同ヴォイスの形は、動詞によっては相互ヴォイスと同じ意味を表すことがあります。ところが、そのような動詞の中には、本来の相互ヴォイスの形をすでにとれなくなっているものもあり、よく使われる動詞をそのまま覚えてしまうほかありません。
協同ヴォイスの形で相互の意味を表す主な動詞は以下のとおりです。
тань- 認識する
→ танилц- 相互に認識する=知り合う
соль- 代える
→ солилц- 交換する
ярь- 話す
→ ярилц- 話し合う
хэл- 言う
→ хэлэлц- 議論する
зөвш- 審議する
→ зөвшилц- 協議する
булаа- 奪う
→ булаалц- 奪い合う
хөтөл- 引っ張る
→ хөтлөлц- 手をとり合う
огтол- 横切る
→ огтлолц- 交差する
衆動ヴォイス
モンゴル語には、このモジュールで仮に衆動ヴォイスと呼ぶ形式があります。
衆動ヴォイスは次の補助語幹によって表されます。→【発音と正書法上の注意】
【語幹-цгаа-】
衆動ヴォイスをとった動詞は、単独ではなく複数(3人以上)で行なう動作や状態を表します。
Тэгсний дараа баранд орцгоосон. そうしたあとで(みんなで)バーに入りました。
Сайн байцгаана уу? 複数の相手に対する挨拶:直訳「(みんな)元気ですか。」
動作主が複数であることが文の主語によってはっきりと示されている場合は必ずしもこの形式を使わなくてもかまいません。
Бид нар баранд ор сон. 私たちは(みんなで)バーに入りました。
【発音と正書法上の注意】
● 補助語幹 -лц- 及び -лд- が接続するとき、語幹の種類によっては次の調整が必要です。以下、 -лц- で代表させて示します。
子音字で終わる場合は、補助語幹の直前に必ず短母音字を挟みます。
語幹 сур- 「学ぶ」+-лц- → суралц-
語幹 тусал- 「手伝う」+-лц- → туслалц-
ь で終わる場合は、語幹末の ь を и に変えます。
語幹 тань- 「認識する」+-лц- → танилц-
語幹 харь- 「帰る」+-лц- → харилц-
● 補助語幹 -цгаа- が子音字 д・т・з・ж・ц・ч・с・ш・х で終わる語幹に接続する場合は、補助語幹の直前に必ず短母音字を挟みます。
語幹 ид- 「食べる」+-цгээ- → идэцгээ-
語幹 тэмц- 「戦う」+-цгээ- → тэмцэцгээ-