形動詞形の流用による非過去テンス
現代のモンゴル語では、本来は文の述語になるための語尾ではない形動詞形の一部が、過去を表す終止形を補充するために流用されることを学習しました。これと同じように、形動詞形の中には、非過去を表す終止形に準じて使われるものもあります。
まず、形動詞形 -даг に述語となる用法があります。
平叙文
【語幹-даг】
質問文
【語幹-даг】 уу(вэ)?
否定文
【語幹-даггүй】
発音と正書法上の注意は形動詞形の項を参照してください。
この形は、「(いつも・ふだん)~する…」というテンスを超越した恒常的・習慣的な時間的意味を表します。
Би байнга номын санд хичээл хийдэг. 私はいつも図書館で勉強します。
Танай тоть сайн ярьдаг уу? おたくのオウムは(ふだん)上手に話しますか?
Сайнбаяр бараг зурагт үздэггүй. サインバヤルは(ふだん)ほとんどテレビを見ません。
ただし、とくに口頭の発話などでは、この形が近い過去を表す場合もあります。
次に、形動詞形 -аа も終止形と同様に述語となることができます。ただし、述語としてこの語尾をとるのは基本的に一部の状態動詞に限られます。また、この用法での平叙文に直接対応する質問文・否定文はなく、これまでに学習した非過去の質問文及び否定文の形を使います。
平叙文
【語幹-аа】
これも、発音と正書法上の注意は形動詞形の項を参照してください。
この形は、終止形 -на と同じ非過去を表しますが、その状態が話し手の把握できる領域から心理的に離れたところにあるというニュアンスを持ちます。
Одоо тэнд байна. 今あそこにあります。(あることを話し手が確信しているなどの場合)
Одоо тэнд байгаа. 今あそこにあります。(あるという状態と話し手の間に心理的距離がある場合)
さらに、文脈によっては、単なる現在の状態ではなく、少し前からその状態が継続しているというアスペクト的なニュアンスを表すこともあります。
Энд байна. ここにあります。(単なる現在の状態)
Энд байгаа. (さっきから)ここにあります。(その状態が少し前から継続中)