東京外国語大学言語モジュール

Step3 : テンス(2) 非過去(1)

非過去を表す終止形
 
  モンゴル語では、過去ではないものは一括して同じ語尾で表されます。ここでは「過去でないもの」をまとめて非過去と呼ぶことにします。
 
  非過去を表す終止形の形は次のようになります。→【発音と正書法上の注意】
 
      【語幹-на
 
  モンゴル語の非過去の終止形は、過去以外の時間的意味をすべて形の上で区別せずに表します。
 
      Энэ загас мах иднэ.  この魚は肉を食べます。(恒常的な動作)
      Тэнд том номын сан байна.  あそこに大きな図書館があります。(恒常的な状態)
      Бүх цэцэг заавал хагдарна.  すべての花は必ず枯れます。(一般的真理)
      Аав маргааш ирнэ.  お父さんは明日来ます。(未来)
 
  状態動詞 бай- 「ある」の場合は、上記の意味に加えて、純粋な現在の状態を表すことができます。
 
      Одоо энд байна.  今ここにいます。(現在の状態)
 
  このほか、習慣を表すこともありますが、あとで学習する別の語尾によって表すほうが一般的なので、あまり多くは見られません。
 
      Эмээ дандаа цай ууна.  おばあさんはいつもお茶を飲みます。(習慣)
質問文の形
 
非過去を表す終止形をとった文を質問文にするには、質問文を作る助詞 уу を使うことは同じなのですが、次のような特別な形をとります。→【発音と正書法上の注意】
 
      【語幹】  уувэ?
 
      Чи нөгөөдөр ирэх үү?  君はあさって来ますか?
      Чи нөгөөдөр ирнэ үү?  (×)
 
  ただし、状態動詞 бай- 「ある」だけは例外となり、テンスに応じた2種類の質問文を使い分けます。
 
      【語幹】  уувэ(未来を表す場合)
       【語幹-на】  уувэ(未来以外を表す場合)
  
      Чи маргааш энд байх уу?  君は明日ここにいますか?(未来)
      Тэнд рестран байна уу?  あそこにレストランはありますか?(恒常的な状態)
【発音と正書法上の注意】
 
● 語尾 -на を子音字の2連続で終わっている語幹に接続するとき、-на の直前に必ず短母音字を挟みます。
 
     語幹 унш- 「読む」-на уншина
     語幹 харагд- 「見える」-на харагдана
 
● 否定形 -х уу (-х вэ) が接続するとき、語幹の種類によっては次の調整が必要です。
 
  子音字で終わる語幹に接続するときは、х の直前に必ず短母音字を挟みます。
 
     語幹 унш- 「読む」+унших
     語幹 ид- 「食べる」+идэх
 
  ь で終わる語幹に接続するときは、語幹末の ь и に変えます。
 
     語幹 урь- 「招く」+урих
     語幹 зохь- 「合う」+зохих
 
否定形 -х вэ は、スタイルによっては、 вэ が子音単独で発音される -хав という縮約形になります。この結果、疑問代名詞があるにもかかわらず -х уу と発音しているかのように聞こえる場合が少なくありません。