東京外国語大学言語モジュール

Step2 : 集合数詞

集合数詞
 
  モンゴル語には、まとまった集合などを表す集合数詞の形があります。
 
  集合数詞は、基数詞に次のような語尾を接続することによって表されます。文の中での使い方によって形が少し違うことに注意してください。→【発音と正書法上の注意】
 
      名詞的用法の場合
      【基数詞-уулан (Г交代語幹あり)
 
      副詞的用法の場合
      【基数詞-уул
 
  基数詞のうち、1~10の集合数詞形を以下に示しますが、これ以外の基数詞であっても表現として必要があれば集合数詞を作ることは可能です。なお、集合という意味上、1の集合数詞は用いられないほか、2・6・7はやや不規則な形になりますので注意してください。
  なお、集合数詞はほかの種類の数詞とは違い、実際の表記においても、多くの場合算用数字ではなく単語としての表記を行います。
 
基数詞
集合数詞
2
хоёр
хоёул
3
гурав
гурвуул
4
дөрөв
дөрвүүл
5
тав
тавуул
6
зургаа
зургуул
7
долоо
долуул
8
найм
наймуул
9
ес
есүүл
10
арав
арвуул
 
  数のうち、単語としての基数詞を持たず、ほかの基数詞を組み合わせて表されるものは、組み合わせに含まれる基数詞のうちの最後のものだけを集合数詞にすることによって、その数全体の集合数詞を作ることができます。
 
      арван тавуул  集合数詞「15」
 
  集合数詞に対応する疑問代名詞は、 хэд 「いくつ」に同じ語尾を接続した хэдүүл という形になります。
集合数詞の名詞的な用法
 
  集合数詞は、基数詞と同じように文の中で名詞的に用いることができます。名詞的に使われる場合は、「~人とも」や「~個のもの全部」など代名詞を兼ねたような使い方となりますが、あくまでも集合したものを表すという点に注意してください。
  名詞的に使われる集合数詞はГ交代語幹を持ちますので、格語尾が接続するときには注意が必要です。
 
      Хоёулангаас нь асууж үзлээ.  2人ともにたずねてみました。(2人が一緒にいる場合や、話者の心の中では同じ範疇にいる2人の人間の場合など) 
      Энэ гурвуулангийн билет.  これは3人分のチケットです(3人で1枚の場合や、3枚をまとめて持っている場合など)。
集合数詞の副詞的な用法
 
  集合数詞は、「~人で」や「~個で」というように文の状況語成分として使うことができます。このとき、ほとんどの場合は、再帰語尾が接続します。
 
      Бид тийшээ зургуулаа явсан.  私たちはそちらへ6人で行きました。
      Танайх хэдүүлээ амьдардаг вэ?  おたくは何人で暮らしていますか?
      Энэ хоёр хоёулаа миний дүү.  この2人は2人とも私の弟(妹)です。
 
  再帰語尾がないと、ややくずれたスタイルという印象を与えます。
 
 
  以上のような典型的な用法以外に、モンゴル語では、日本語ではまったく訳せないような部分で集合数詞が使われることが少なくありません。次のような例では、「~人で」という状況語が述語にとって必ずしも必要なわけではありません。
 
      За, хоёулаа яах вэ?  さあ、今度は【2人で】どうしましょうか?
      Одоо гурвуулаа явцгаая.  そろそろ【3人で】出かけましょう。
 
  これらは、明示されない主語を集合数詞でまとめることによって親愛感や仲間意識を表す一種の待遇表現だと考えられます。
形容詞による類似形式
 
  集合数詞を作る語-уул は、数に関係する一部の形容詞にも接続します。接続に際して語幹の形が微妙に変わる場合が多いので、学習上は別の副詞として覚えたほうが無難です。
 
      олон  多い
      → олуулаа  大勢で
      цөөхөн  少ない
      → цөөхүүлээ  少人数で
【発音と正書法上の注意】
 
 集合数詞を作る語-уул が接続するとき、語幹の種類によっては次の調整が必要です。
 
  и 以外の短母音字で終わる語幹の場合は、その短母音字を脱落させたうえで接続します。
 
     語幹 мянга 「1000 : а脱落-уул мянгуул  
 
  я で終わっている語幹の場合は、それらを残したうえで、-уул の形を -ул とします
 
     語幹 ная80: +-ул наяул
 
  長母音で終わる語幹の場合は、子音 g がつなぎとして現れますので、綴りの上でもこれを表記します。
 
     語幹 зуу100」: г挿入-уул зуугуул
 
  ь で終わる語幹の場合は、-уул を接続したときにできる綴り ьуул の ьу の部分を母音字 и に変えて иул にします。この規定の目的は単に活字をひとつ節約することで、иу という二重母音になるわけではありません。
 
     語幹 хорь20」: -уул хорьуул хориул
 
  なお、集合数詞を作る語尾 -уул は母音で始まる語尾ですから、子音字で終わる語幹にこれを接続するときには、正書法一般のいわゆる脱落母音の規則とその例外にも十分注意してください。