東京外国語大学言語モジュール

Step6 : 指示代動詞

指示代動詞
 
  モンゴル語には、それ自身では語彙的な意味を表すことができず、現場や文脈の中のある動作・状態を指し示す動詞があります。このモジュールでは、そのような動詞を仮に指示代動詞と呼ぶことにします。日本語は同じ意味を「コウ/ソウ/アア」または「コノヨウニ/ソノヨウニ/アノヨウニ」という副詞+動詞「スル」の組み合わせで表現します。
 
  モンゴル語の指示代動詞は次のとおりです。
 
近称
ингэ-
非近称
тэг-
 
 
  近称と非近称の違いは、おおむね近称が日本語の「コウスル」、非近称が「アアスル」に対応し、指示代名詞の使い分けに対応しますが、現場の具体的な動作・状態を指しながら話す現場指示の場合に、日本語の「ソウスル」のように、「聞き手の近くにあるもの」を指すことができる点が指示代名詞とは異なります。
 
      (少し離れたところにいる聞き手に対して)
      Тэгж хийхгүй.  そのようにはしません。
 
  この場合、以前に学習したように、指示代名詞の近称は使うことができません。
 
      Тэр юу вэ?  (聞き手の近くにあるものをたずねる文としては×)「それは何ですか?」
 
 
  指示代動詞の使い分けについては、このほかにも文脈指示の場合にどうするかという問題が残されています。今後、聞き手がいる場合といない場合(テクストの場合)に分けるなどした詳しい記述研究が望まれます。
動詞文の質問に対して使う用法
 
  モンゴル語では、動詞文の質問に対しては「イエス/ノー」という語を使わず、同じ動詞の形で答えることを以前に学習しました。このとき、同じ動詞の代わりに、非近称の指示代動詞を使って質問に答えることがよくあります。
 
      Өчигдөр кино үзсэн үү?  昨日映画を見ましたか?
      Тэгсэн.  そうしました。
      ~ Үзсэн.  見ました。