疑問代名詞の譲歩表現
モンゴル語では、疑問代名詞の直後に助詞 ч を置くことによって、「その疑問代名詞が指すどんなものであっても」という譲歩の意味を表すことができます。
【疑問代名詞】 ч
たとえば、「人間」の疑問代名詞 хэн が単独である場合は、「人間」をたずねる「誰」を意味しますが、これに助詞 ч を接続した хэн ч という形は、「誰であっても」という譲歩の意味、すなわち「すべての人間」・「任意の人間」を意味します。
Хэн ч иднэ. 誰でも食べます。
この文は、「誰であっても食べる」、すなわち「すべての人間/任意の人間が食べる」という意味になります。
一方、否定文の場合は次のようになります。
Өчигдөр хэн ч ирээгүй. 昨日は誰も来ませんでした。
否定文の場合も、疑問代名詞+助詞 ч の部分は「誰であっても」という譲歩を表しますが、この場合の述語はそれが「来なかった」という否定の形になっていますので、この文は結局、「昨日は誰も来ませんでした」という全否定を意味することになります。
上の例は、いずれも疑問代名詞が主格になっている場合ですが、疑問代名詞は、主格以外のさまざまな格変化をした状態でも助詞 ч を後続して「すべての~」・「任意の~」を表すことができます。
Би цуглуулсан маркаа юугаар ч солихгүй. 私は集めた切手を何とも交換しません。
この例は、疑問代名詞 юу 「何」が、この場合は交換物を表す造格の形をとったうえで助詞 ч を後続しているものです。
疑問代名詞 аль 「どれ」は、選択してたずねるという性質上、選択元となる集合を示す必要があります。このとき、選択元が3人称の場合は人称関係助詞をとります。助詞 ч は人称関係助詞のあとという順序になりますので注意してください。
Надад аль нь ч таалагдсангүй. 私には(その)どちらも気に入りませんでした。
аль ч нь (×)
ただし、選択元が文の中で明確に表現されていても人称関係助詞がそのまま置かれることもあります。
Өнөр тэр хоёр сургуулийн алинд нь ч орсонгүй. ウヌルはあのふたつの学校のうちのどちらにも入りませんでした。
事物をたずねる疑問代名詞 юу 「何」は、直接目的語として対格をとる場合でも対格語尾を省略することがありますが、助詞 ч を後続するときにはその省略が顕著になります。たとえば、次の文に含まれている юу は、対格語尾を省略したうえで助詞 ч が後続しているものです。
Би одоо юу ч уухгүй. 私はもう何も飲みません。