東京外国語大学言語モジュール

分数と小数の表現

分数の表現
 
  モンゴル語で分数を表現するには、日本語と同じように分母の部分を先に、分子の部分をあとで述べます。このとき、分母の部分は、基数詞に特別な語尾を接続することによって表されます。
 
      【分母の基数詞-ны  【分子の基数詞】
 
  -ны は、母音調和による -ний への交代はありますが、1と2を含むすべての基数詞にそのまま接続する特別な語尾です。このモジュールでは、この語尾をとった形を基数詞の分母形と呼ぶことにします。属格の形(数詞の場合はН交代語幹が現れない)との違いに注意してください。
  なお、これらが日常用語としてではなく算数・数学の場面で使われるときには、算用数字による一般的な分数表記になることは言うまでもありません。
 
  基数詞のうち、単語が存在するものの分母形を以下に示します。なお、分母なので「0」は除外してあります。
 
語幹
分母形
1
нэг
нэгний
2
хоёр
хоёрны
3
гурав
гуравны
4
дөрөв
дөрөвний
5
тав
тавны
6
зургаа
зургааны
7
долоо
долооны
8
найм
наймны
9
ес
есний
10
арав
аравны
20
хорь
хорины
30
гуч
гучны
40
дөч
дөчний
50
тавь
тавины
60
жар
жарны
70
дал
далны
80
ная
наяны
90
ер
ерний
100
зуу
зууны
1000
мянга
мянганы
100万
сая
саяны
10億
тэрбум
тэрбумны
 
      гуравны нэг  1/3
      аравны долоо  7/10
 
  数のうち、単語としての基数詞を持たず、ほかの基数詞を組み合わせて表されるものは、組み合わせに含まれる基数詞のうちの最後のものだけを分母形にすることによって、その数全体を分母とする表現にすることができます。
 
      гучин есний хоёр  2/39
      зургаан зуун дөчин наймны нэг  1/648
 
  帯分数は、整数の部分を表す基数詞のН交代語幹で бүхэл 「全体」という語を修飾したうえで、残りの分数部分を続けることによって表します。整数部分のこの言い方はロシア語 целый 「全体の」をそのまま直訳したものです。このとき、整数部分の基数詞がН交代語幹になるルールは、1と2を除くという原則どおりになります。
 
      【整数の基数詞】  бүхэл  【分数の表現】
 
      гурван бүхэл зургааны тав  3と5/6
      нэг   бүхэл дөрөвний нэг  1と1/4
 
  実際にはあまり使われませんが、分数が形容詞的に使われる場合は分子を表す基数詞だけがН交代語幹となります。
 
      тавны гурван метр  3/5メートル
 
  形容詞的に使われる1/2は хагас 「半分」という語で表すこともあります。
 
      хагас метр  半メートル=1/2メートル
 
  分数が格をとる場合も、分子の部分だけに格語尾が接続します。
 
      наймны таваас гуравны нэгийг хас-  5/8から1/3を引く
小数の表現
 
  モンゴル語で小数を表現するときは、ことばの構造としては、分母を10の倍数とする分数に直して表現します。これもロシア語からの直訳で、小数が形容詞的に使われる場合や格をとる場合の変化も分数と同じです。
  ただし、小数では、日常用語として使われるときも算用数字を使い、分数ではなく小数の形での表記を行います。
 
  表現は、1より小さいか大きいかによって次のような違いがあります。
 
  まず、1より小さな小数は、まず0を述べたうえで、分数に直した部分をそのまま続けます。なお、以前にも述べたように、算用数字で表記するときの小数点はヨーロッパ式で、ピリオド( . )ではなくコンマ( , )となるのがふつうですから注意してください。ここでは括弧内にヨーロッパ式の表記、訳の部分に日本式を示します。
 
      ноль, аравны тав0,5  0.5=5/10(1/2に約分しない)
      ноль, зууны дөчин зургаа0,46  0.46=46/100
      ноль, мянганы хоёр зуун далан нэг0,271  0.271=271/1000
 
  一方、1より大きな小数は、1未満の場合と同じように整数部分をそのまま述べてから分数を続ける方法と、帯分数として述べる方法とがあります。 
 
      зургаа, зууны гучин найм6,38  6.38=6と38/100
      зургаан бүхэл зууны гучин найм 
 
  以上の方法で分数に直して表現するのは、実際上は小数第3位までがほとんどで、分母が大きくなる小数第4位以下を持つ場合や、分数にすることが不可能な無理数の場合は、小数点以下を基数詞でそのまま表現することになります。
  すなわち、整数の部分については帯分数の整数と同じように бүхэл を使って表したうえで、小数点以下の数を続けて述べていきます。このとき、数をひとつづつ述べるのではなく、3桁ずつ区切って3桁の数として述べていくか、「2桁+1桁+2桁」を単位とすることが行なわれます。
  これを2の平方根(1.414213562373……)の場合で見てみましょう。
 
      нэг бүхэл と述べたあとで
      414(дөрвөн зуун арван дөрөв), 213, 562, 373 ……  (3桁を単位とする場合)
      41:4:21(дөчин нэг, дөрөв, хорин нэг), 35:6:23, 73 ……  (『2桁+1桁+2桁』を単位とする場合)