完成アスペクト
モンゴル語には、動作動詞に接続し、動作の完成という局面を表す完成アスペクトの形式があります。
完成アスペクトは、次の補助語幹によって表されます。→【発音と正書法上の注意】
【語幹-чих-】
補助語幹は、形動詞形語尾 -х の前などでは -ч- という縮約形になることがあります。
完成アスペクトをとった動詞は、動作の一連の流れのうちの完成という局面にあることを表します。日本語では「~てしまう」に相当します。
Талх дуусчихсан уу? パンは売り切れてしまいましたか?(『売り切れる』という動作が完成したかどうかを質問)
Хурдан идчих! 早く食べてしまいなさい!(『食べる』という動作を完成させることを命令)
完成アスペクトは、あくまでも局面を述べるだけであり、その時点より前に動作が完結していることを表す完了アスペクトとは異なります。したがって、完成だけではなく完了の意味を表したいときには完了アスペクトの形式をさらに接続しなければなりません。
Намайг очиход бүх талх дуусчихсан байлаа. 私が着いたときすべてのパンが売り切れてしまっていました。(そのときに『売り切れる』という動作の完成がすでに完了していた)
Намайг очиход бүх талх дууссан байлаа. 私が着いたときすべてのパンが売り切れていました。(そのときに『売り切れる』という動作がすでに完了していた=完成の意味はない)
Намайг очиход бүх талх дуусчихлаа. 私が着いたときすべてのパンが売り切れてしまった。(そのときに『売り切れる』という動作が単に完成した)
完成アスペクトが継続・反復アスペクトの形式 -аад бай- とともに用いられると、全体として完了アスペクトに近いニュアンスを表すようになります。
Намайг очиход бүх талх дуусчихаад байлаа. 私が着いたときすべてのパンが売り切れてしまっていました。
【発音と正書法上の注意】
● 補助語幹 -чих- のあとに母音で始まる語尾が接続し、本来ならば母音字を脱落させなければならない場合でも、補助語幹の綴りに含まれる母音字 и は、実際の発音とは無関係にそのまま残します。
語幹 явчих- 「行ってしまう」+-аад- → явчихаад
● 補助語幹 -чих- のあとに形動詞形語尾 -сан が続く形 -чихсан は、スタイルによっては縮約して -цан という音になることがあります。