形容詞が名詞として使われる場合
モンゴル語の形容詞は、意味的に、または文脈や環境によって、本来の名詞と同じようにある特定の意味的な範囲を指し示すことができる場合には、名詞類と同じように活用することができます。
意味的に名詞類に準じて使われやすい形容詞には次のようなものがあります。
色彩を表す形容詞は名詞的に用いることができます。この場合、色彩そのものを表す場合と、その色彩を持ったものを指す場合とがあります。
Нарыг улаанаар будах уу? 太陽は赤(←赤い)で塗りますか?
Тэр харыг авлаа. あの黒いの(←黒い)を買いました。
これと同じように、人間の世代を表す形容詞も、その世代の人間そのものを表す名詞として用いることがよくあります。
Манайд нэг залуу ирлээ. うちに1人の若者(←若い)が来ました。
Автобусанд хоёр хөгшин сууж байлаа. バスに2人の老人(←老いた)が乗っていました。
また、ある形容詞と、その形容詞の対義語となる別の形容詞をそのままの形で並べた組み合わせは、それらの形容詞の意味によって境界が示されるひとつの概念を表す複合名詞を作ります。
сайн муу よしあし(←よい+悪い)
халуун хүйтэн 温度(←暑い/熱い+寒い/冷たい)
このほかの形容詞でも、その形容詞が文脈の中ですでに了解済みの旧情報である場合は、名詞的な扱いが可能になります。
旧情報であるということは、話し手(書き手)と聞き手(読み手)が、その形容詞の一般的な属性ではなく、当該の文脈における具体的な指示範囲についての共通理解を持っていることを意味します。たとえば、単に「『高い』の反対」という一般的な意味での「安い」ではなく、その文脈においてさまざまな値段のものがあるときに、「安い」ということばで具体的に指し示されるものがお互いにわかっていれば、それを具体的な名詞に準じて扱うことができるようになるわけです。
旧情報であることによって名詞的に使われている形容詞のあとには、多くの場合、人称関係助詞が置かれます。人称関係助詞をとった要素が旧情報となることは、以前のステップで学習したとおりです。
Тэгвэл томыг нь авчраарай. (店には大小両サイズが売っているという文脈があったうえで)それでは大きいの(←大きい)を買ってきてください。
Жижиг нь манай ах. (大小ふたりの人間がいるという文脈があったうえで)小さいほう(←小さい)がうちの兄です。