東京外国語大学言語モジュール

モダリティと希求形

動詞の希求形
 
  希求形は、モンゴル語の動詞が文の中で使われているときに必ずとる4つの形のひとつで、終止形と同じように、文の述語になることができます。
  希求形には、細かい意味や機能を示すいくつかの具体的な形があり、動詞の語幹に接続する希求形語尾によって表されます。
 
  モンゴル語の希求形には、次のような機能と特徴があります。
 
  希求形は、終止形とともに述語として文を終えることができます。ただし、終止形がその述語の時間的意味を表すのに対し、希求形は、話し手の希望や意思、聞き手に対する要求などを表す点が異なります。
 
  また、希求形のうち聞き手に対する要求を表すものは、その意味を逆に変える特殊な助詞を前にとることができます。詳しくはあとのステップで学習しますが、この助詞は、モンゴル語の文法の中でも、語順的に希求形の前に置かれるという点がきわめて特殊です。
 
  さらに、希求形はその意味的な性質上、使われる動作主の人称にそれぞれ制限があります。たとえば、意志を表す形は3人称の主語について使うことができません。
文のモダリティ
 
  文が伝えようとする内容に対する話し手の気持ちや判断、聞き手に対する働きかけなど、文の内容に付け加えられる話し手の述べ方を広くモダリティと呼びます。たとえば、次の文ではそれぞれ、疑いや判断、聞き手に対する確認といった意味が下線部の表現によって付け加えられています。
 
      明日は雨が降るんじゃないかな
      青江さんはまだお元気らしいですよ
      あなたは去年入学したんですよね
 
  モンゴル語は、日本語と同じように、主として文末に付け加えられるさまざまなモダリテのィ表現が発達しており、それらを使いこなすことによって生き生きとした発話が可能になります。
 
  さきに述べたように、モンゴル語のモダリティ表現を作る第一の方法は、述語の動詞を希求形にすることです。希求形では、さまざまなモダリティの意味のうち、話し手の希望や意図、聞き手に対する要求といった、主として聞き手に対する表現が作られます。
  一方、現代のモンゴル語では、希求形以外のさまざまな方法によるモダリティ表現も多様に発達しています。これには、連体節と形式名詞によるものや、各種の終助詞によるものなどが含まれます。
 
  このモジュールでは、モダリティの表現を意味的にいくつかに分類したうえで、希求形を使うものとそうでないものを合わせた関連表現を同じステップでまとめて扱う方式をとります。
終助詞
 
  モンゴル語にはさまざまな助詞がありますが、その中でも、文の最後に置かれる終助詞の形式が発達しています。
 
  終助詞には次のような特徴があります。
 
  表記のうえでは述語動詞の形と離して書かれますが、音韻上は動詞に対して母音調和することを基本とします。ただし、現状をよく観察してみると母音調和しないケースも意外に多く、現代語では過渡期にあると言えます。
 
  終助詞は文のモダリティの表現を作ることが主な機能となります。これまでのステップでは、質問文を作る終助詞を学習しましたが、質問は話し手のモダリティの基本となるものです。
  以後のステップでも、さまざまな終助詞の表現を学習することになりますが、とくに話しことばにおいては、文を終止形や希求形だけ終えることはあまりなく、さまざまな終助詞を駆使することで生き生きとした発話になります。