モンゴル語文法アスペクト（２）完了：解説

完了アスペクト

モンゴル語には、動作動詞に接続し、動作の完了を表す完了アスペクトの形式があります。

完了アスペクトは、次のような複合的形式によって表されます。

【語幹-сан】 бай-

進行・継続アスペクトの場合と同じく、完了アスペクトの形式はあくまでも語幹を拡張してアスペクトの意味を付け加えることしかできませんので、文の中で使うためには必ず必要な４種類の語尾のどれかを必ず付けなければなりません。

	アスペクト形式		文中で必ず必要な語尾
語幹	-сан бай-	＋	終止形希求形形動詞形副動詞形
	アスペクトの意味を付け加える		さまざまなテンスなどを表す

完了アスペクトをとった動詞は、別の語尾で表される過去・現在・未来などの各時点において、語幹の表す動作がすでに完了している（いた）ことを表します。

Очсон байх болно. 「到着する」という動作が未来の時点ですでに完了していることになる

Бичсэн байна. 「書く」という動作がすでに完了している

Зохицуулсан байлаа. 「調整する」という動作がすでに完了していた

Усалсан байна. 「水をやる」という動作がすでに完了している

進行・継続アスペクトの形が使えない瞬間動詞も完了アスペクトをとることができます。

Хагарсан байсан. 「壊れる」という瞬間的な動作がすでに完了していた

Унтарсан байна. 「消える」という瞬間的な動作がすでに完了している

Үхсэн байжээ. 「死ぬ」という瞬間的な動作がすでに完了していた

いずれの場合も、それがどの時点なのかは、アスペクト形式のあとに接続する終止形の種類によって表されます。

日本語の「～ている」形式との対応

日本語の「～てい（る）」は完了を表すこともできますので、モンゴル語の完了アスペクトもこれに対応します。以前に学習した進行・継続アスペクトを含めた対応関係をまとめると次のようになります。

意味	例	モンゴル語
意味	例	進行・継続	完了
動作の進行	山田さんは部屋で勉強をしている。	○	―
結果の残存	教室の窓ガラスが昨日から割れている。先生は３日前からモンゴルに行っている。	―	○
習慣	私は毎週テニスをしている。	―	―
反復	パーティ会場に賓客が次々と到着している。	―	―
対象の属性	トーラ河はウランバートル市内を流れている。	―	―
経験	田中さんは去年まで３年間この店で働いている。私は３日前にその番組を見ている。	△	―
完了	文法の学習はもう終わっている。	―	○
反実仮想	あのとき先生がいなかったら私は死んでいた。	―	―

テンスだけを表す用法

完了アスペクトの形が非過去の終止形とともに用いられるとき、「現在または未来のある時点ですでに完了している」という本来の意味以外に、アスペクトとは無関係の単なる過去テンスだけを表す場合があります。この場合、過去の終止形 -жээ と似たようなニュアンスを持ちます。完了アスペクトの形式がこの用法で使われているかどうかは、最終的には文脈から判断するほかありませんが、歴史的な出来事を現在の視点から叙述する場合などに多く見られます。

Цэдэнбал тэр үед ЗХУ-д айлчилсан байна. ツェデンバルはそのときにソ連を訪問している。（過去テンスのみ）

（ЗХУ ＝ Зөвлөлт Холбоот Улс ソビエト連邦）

＝ Цэдэнбал тэр үед ЗХУ-д айлчилжээ.

アスペクト（２） 完了

アスペクト（２）完了