東京外国語大学言語モジュール

欠如格と様態格

欠如格
 
  モンゴル語にはこのモジュールで仮に欠如格と呼ぶ格があり、述語動詞に対するさまざまな関係を表します。文法によっては欠格と呼んでいる場合もあります。
 
  欠如格語尾は次のとおりです。
 
      【語幹-гүй
 
  この語尾は母音調和を行なわず、すべての語幹にそのまま接続します。代名詞は、これまでに見てきた格と同じように、надчам といった交代語幹をとります。
 
      語幹 чихэр 「砂糖」 : +гүй → чихэргүй
      語幹 мөнгө 「お金」 : гүй → мөнгөгүй   
 
 
  欠如格は、その事物・人間が欠如している状態を表します。
 
      Чи мөнгөгүй явж байна уу?  君はお金なしで来ていますか?
      Би үүнийг толь бичиггүй орчууллаа.  私はこれを辞書なしで翻訳しました。
 
 
  昔書かれた文法などには、欠如格の形を格に含めない考え方もありますが、少なくとも、語尾が語幹に直接接続されること、述語に対する意味役割を表すこと、代名詞がほかの格と同じ交代語幹をとることから、本モジュールでは格の一種としています。
様態格
 
  モンゴル語にはこのモジュールで仮に様態格と呼ぶ格があり、述語動詞に対するさまざまな関係を表します。
 
  様態格語尾は次のとおりです。
 
      【語幹】 шиг
 
  この語尾は、方向格語尾と同じように語幹から離して表記します。代名詞は、これまでに見てきた格と同じように、надчам といった交代語幹をとります。
 
      語幹 хүн 「人間」 : +шиг → хүн шиг
      語幹 нохой 「犬」 : шиг → нохой шиг   
 
 
  様態格は、その事物・人間に類似しているという状態を表します。
 
       Манай тоть яг хүн шиг ярьж байна.  うちのオウムはまさに人間のように話しています。
 
 
  様態格の形は格として扱われないこともありますが、欠如格と同じ理由により、本モジュールでは格の一種と見なすことにします。