東京外国語大学言語モジュール

質問文の作り方

質問文の形式
 
  モンゴル語の質問文は次のような形式によって作ることを基本とします。
  なお、このステップでは、コピュラ文を例として説明し、動詞文の形は今後のステップでひとつひとつ取り扱いますが、作り方の基本的な原理はコピュラ文でも動詞文でも同じです。
 
  モンゴル語の質問文は、疑問代名詞を持つ場合と持たない場合とで異なる作り方をします。
 
  疑問代名詞を持たない質問文は、уу または юу という助詞を文末に置くことで表されます。日本語の「~か?」と同じようなイメージです。これらの助詞は、正書法の規定では直前の語とは切り離して書きますが、уу は直前にある語と融合して発音されます。
 
      【文】  уу ?(下記以外の場合)
      【文】  юу ? 最後の語の綴りが長母音・二重母音で終わる場合)
 
      Энэ самбар ууこれは黒板ですか?
      Тэр харандаа юуあれは鉛筆ですか?
 
  ひとつの子音と短母音だけでできている語の場合、短母音の発音は長めに発音されますので、長母音で終わる語として扱われます。
 
      Та юуあなたですか?
      Та уу(×)
 
  一方、疑問代名詞を持つ質問文は、助詞 вэ を文末に置くことで表されます。ただし、くだけたスタイルでは省略されることも少なくありません。なお、助詞 вэ もひとつの子音と短母音だけでできている語ですから、短母音の部分は長く発音されます。
 
      【(疑問代名詞)文】  вэ ?
 
      Энэ ямар бичиг вэこれはどんな書類ですか?
      Тэр юу вэあれは何ですか?
 
  質問文の中に疑問代名詞が含まれているかどうかという区別はモンゴル語ではかなり厳密で、質問文を作ろうとするときには疑問代名詞があるかどうかを必ず意識しなければなりません。
 
  モンゴル語には、疑問代名詞以外にも疑問動詞疑問副詞と呼ばれる一連の語が存在しますが、助詞 вэ はそれらを含む質問文にも用いられます。詳しくはあとのステップで改めて扱います。
コピュラ文の質問への答え方
 
  コピュラ文の質問のうち、疑問代名詞を持たないもの対しては、次の語を使ってイエスかノーかを答えたあとで、必要であればさらにコピュラ文を続けます。
 
イエスの場合
тийм
ノーの場合
үгүй
 
      Энэ гар утас уу?  これは携帯電話ですか?
      Тийм, энэ гар утас.  はい、これは携帯電話です。
      Үгүй, энэ гар утас биш.  いいえ、これは携帯電話ではありません。
 
  ノーの返事の場合、үгүй の代わりに биш で答える場合もあります。これは、否定のコピュラ文の一部を省略したものです。
 
  一方、疑問代名詞を使って質問された場合は、必要に応じてコピュラ文を返します。
 
      Тэр юу вэ?  あれは何ですか?
      Тэр казах гэр.  あれはカザフ式ゲルです。
質問文を作る助詞の綴り上のバリエーション
 
  質問文を作る助詞は、キリル文字の綴りでは次のような点に注意が必要です。
 
  助詞 уу は、女性語のあとでは母音調和の原則によって үү となります。юу も同じ理由で女性語のあとでは юү となります。
 
      бичиг 「書類」: + үү → бичиг үү
      өрөө 「部屋」 : + үү → өрөө юү
 
  вэ は正書法によって бэ と書かなければならない場合もあります。これは、実際に現れる音声を反映したものなので発音モジュールで扱う問題となりますが、綴りの上で機械的に判断する場合は、最後が子音字 в・л・м・н で終わっている場合には бэ と書くことを覚えてください。なお、母音調和による綴りのバリエーションはありません。
 
     аав 「お父さん」: бэ аав бэ
     хэл 「言語」 : бэ хэл бэ
     ном 「本」: бэ ном бэ
     тайлан 「報告書」 : бэ тайлан бэ
 
  以上をまとめると次のようになります。
 
疑問代名詞
条件
綴り上のバリエーション
なし
男性語
уу
үү
女性語
юу
юү
あり
下記以外
вэ
末尾が子音字 в・л・м・н
бэ
 
 
  母音調和や子音交代の現象、それに伴なう綴り字の変化は、本来は文法モジュールで扱うことがらではありませんが、学習者の便宜を考え、本モジュールでは次のように取り扱うことにします。
  まず、уу と үү のように、母音調和する部分の綴りが発音に伴なって変わるだけのものは、機械的に判断できますので説明から割愛します。
  一方、正書法上のそのほかの規定がかかわる部分については、発音モジュールの復習と同モジュールでは十分に扱われていないものの紹介を兼ねて、【発音と正書法上の注意】として詳しく解説します。
コピュラ文の否定質問文
 
  前のステップで学習したコピュラ文の否定形式もこの助詞を使って質問文にすることができます。すなわち、~ биш という否定文の最後に助詞 үү (文の最後の語である биш に対して母音調和してこうなります)を置けばよいのです。
 
      【A:主格】  【B:主格  биш  үү?
 
      Энэ Батбаяр биш үүこれはバトバヤルではありませんか?(写真を見ながら)