語の構造
文の中にある語は、語幹と語尾という2つの部分から成り立っています。
語幹とは、語の語彙的な意味を表す部分で、単語として辞書に登録されるときには、一般に語幹が単位となります。
一方、語幹に対してさまざまな文法的意味を付け加える部分を語尾と呼びます。品詞の中には、語尾をとらず語幹だけで文の成分になるものもありますが、もっとも重要な品詞である名詞類と動詞では、つねに語幹と語尾がセットになった形で文中に現れます。
モンゴル語は、語幹のうしろに次々と語尾が接続していく典型的な膠着型の言語です。
次の例を見てください。これは、ふつうに使われるひとつの単語です。
төлөвлөгөөжүүлэгдсэнээрээ
これを、語幹と語尾に分けると次のようになります。
語幹 төлөвлөгөөж- 語尾 -үүлэгдсэнээрээ
そして、語尾の部分はさらに5つに分けられます。つまり、この例は、ひとつの語幹に5つの語尾が次々と接続してできあがった形ということになります。
төлөвлөгөөж 語幹・自動詞「計画化される」
төлөвлөгөөжүүл 自動詞を他動詞に転換「計画化する」
төлөвлөгөөжүүлэгд 他動詞を受動態に転換「計画化される」
төлөвлөгөөжүүлэгдсэн 過去の名詞節に転換「計画化されたこと」
төлөвлөгөөжүүлэгдсэнээр 造格形「計画化されたことによって」
төлөвлөгөөжүүлэгдсэнээрээ 再帰「それ自身が計画化されたことによって」
語には、ひとつの語幹からなる単語のほかに、複数の語幹からなる複合語があります。
複合語の場合、語尾は最後の語幹にだけ接続します。
語幹の構造
語幹の形の中には、それ以上分解できないものもありますが、ある程度の長さの語幹を詳しく見てみると、その音の形のもっとも基本的・原初的な意味を表す部分と、新たな語彙的意味を付け加えたり、品詞を変えたりする働きをもった部分とに分けられます。このとき、前者を語基、後者を派生接辞と呼びます。派生接辞は、ひとつの語基に対していくつも接続することができます。
語幹
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語基
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派生接辞
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派生接辞
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派生接辞
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…
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派生接辞
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さきの例の語幹 төлөвлөгөө も、実は төлөв という語基にまでさかのぼることができます。
төлөв 語基・名詞「様相・様態」
төлөвлө 名詞を他動詞に転換「計画する」
төлөвлөгөө 動詞を名詞に転換「計画」
төлөвлөгөөж 名詞を自動詞に転換「計画化される」
この場合、一番上の төлөв という語基に対して、3つの派生接辞が段階的に接続していることがわかります。
モンゴル語の派生接辞は通常、うしろのほうから接続していく接尾辞で、ひとつとは限らずいくつもの接尾辞をまるでお団子のようにつなげることで、ひとつの語基からさまざまなニュアンスをもった多くの語幹を作り出します。
派生接辞によって作られた語幹の多くはすでに単語として定着しているため、第二言語としてモンゴル語を使う外国人が派生接辞を自由に付けたり外したりして単語を作り出すことは通常ありません。しかし、派生接辞の中には、ある程度自由に接続して新たなニュアンスの語幹や別の品詞を作り出すことができるものもありますし、何よりも、知らない単語に出会ったときに派生接辞についての知識があれば、語基の形などからその語の意味を類推することができるなど、モンゴル語を学ぶうえで、ある程度の派生接辞の知識は便利なものとなるでしょう。