東京外国語大学言語モジュール

文の基本構造

文の成分
 
  モンゴル語の典型的な文を見てみましょう。
 
      Өчигдөр  би  ахтайгаа хамт  гурван  ном  авав.
  
  この文のすべての単語を抜き出すと次のようになります。
 
      өчигдөр  きのう 
      би  私は
      ахтайгаа хамт  兄と一緒に
      гурван  3冊の
      ном  本を
      авав  買った
 
  ここで抜き出したような文の要素を文の成分と呼びます。文の成分は、もっとも単純な場合には単語の単位と一致しますが、複数の単語からなる成分もあります。
 
  авав 「買った」のように、その文が伝えようとするひとまとまりの意味を決める動作を表す成分を述語と呼びます。述語には、動作を表すものだけではなく、状態を表すものがあります。
 
  ном 「本を」のように、述語の意味を補うはたらきをもった成分を補語と呼びます。補語には、この例の「~を」のような動作の対象・目的をはじめとしてさまざまな意味・役割のものがあります。補語を補足語と呼ぶこともあります。
 
  өчигдөр 「きのう」や ахтайгаа 「兄と」、хамт 「一緒に」のように、述語に対して付加的な情報を与える成分を状況語と呼びます。
 
  гурван 「3冊の」のように、述語以外の項を修飾する成分を修飾語と呼びます。
 
  би 「私は」のように、述語が表す動作や状態の主体となす成分を主語と呼びます。
 
  モンゴル語ではこのほか、文のはじめに呼びかけの表現などが置かれることがあり、これを独立語と呼んでいます。
 
 
  モンゴル語は述語が中心となることばです。つまり、述語とそれになくてはならない補足語さえあれば、それだけで文になってしまうのです。文脈からわかりさえすれば、主語さえ必ずしも必要ではありません。モンゴル語では、次のように述語と補足語しかない形式も立派な文ということになります。
 
      Ном  авав.
      ном  本を
      авав  買った
語順
 
  文の成分を並べるためのルールを語順と呼びます。さきの例文を文の成分で表記してみましょう。
 
     Өчигдөр  би  ахтайгаа хамт  гурван  ном  авав.
      【状況語】【補語:動作主】【状況語】【修飾語】【補語:目的語】【述語】
 
  モンゴル語の語順には次の原則があります。最初の例からもすでにわかるように、これは日本語と同じということになります。
 
  (1)述語は必ず文の最後に置かれます。
  (2)修飾語は必ず被修飾語の前に置かれます。
 
  つまり、この2点さえ守られていれば、あとの成分はニュアンスや伝えたい情報によって比較的自由に並べることができるのです。ただし、成分の意味内容によってある程度の傾向はあります。
品詞
 
  文を組み立てる材料となる語をその役割によって分類したものを品詞と呼びます。
 
  モンゴル語の文法では、記述する研究者によって若干の差はありますが、次のような品詞を区別しています。個々の品詞のはたらきや変化についてはこれからのステップで学習することになります。
 
名詞
代名詞
数詞
形容詞
副詞
後置詞
助詞
接続詞
間投詞
 
  品詞と文の成分はまったく別の分類です。たとえば、状況語という成分には、副詞や名詞など複数の品詞がなることができます。