東京外国語大学言語モジュール

主題

 次の文を見てみましょう。
(1)ກະຕ່າຍຫູຍາວ
(ウサギ+耳+長い=ウサギは耳が長い。)
(1)は、「ウサギ」が主題、「耳が長い」が主文で、主語は「耳」、述語は「長い」です。
次の(2)と(3)を比較すると、(2)は二通りの解釈がありますが、(3)は一通りの解釈のみで、「ラープ」が主題です。
(2)ຂ້ອຍກິນລາບ
(私+食べる+ラープ=私はラープを食べた(または)私がラープを食べた。)
これは、基本語順の「主語+述語動詞+補語」において、日本語の「私はラープを食べた」と「私がラープを食べた」は、ラオス語では、いずれも「私・食べる・ラープ」となり、同じ形になってしまうからです。例えば、

 ラオス語:「私・食べる・ラープ」=日本語:「私はラープを食べた」
                          「私がラープを食べた」
 
このように主語が文頭にある場合、文頭に置かれたものがいつも主題を表すとは限りません。一方の(3)は「ラープが私を食べた」はナンセンスですから、一通りの解釈しかない、ということになります。
(3)ລາບຂ້ອຍກິນ
(ラープ+私+食べる=ラープは私が食べた。)
次の(4)と(5)および(6)を比較すると、(4)は「主語+述語+補語+場所の副詞句+時の副詞句」という基本語順の文で、主題はありません。一方、(5)は、「時の副詞句」を主題化した文で、(6)は「場所の副詞句」を主題化した文です。一般にラオス語では、(5)のような、「時の副詞句」を文頭に置く表現を好んで用います。
(4)ຂ້ອຍຮຽນພາສາລາວຢູ່ໂຮງຮຽນທຸກວັນຈັນ
(私+学ぶ+言語+ラオス+~で+学校+毎週月曜日=私は毎週月曜日に学校でラオス語を学びます。)
(5)ທຸກວັນຈັນຂ້ອຍຮຽນພາສາລາວຢູ່ໂຮງຮຽນ
(毎週月曜日+私+学ぶ+言語+ラオス+~で+学校=毎週月曜日に(は)、私は学校でラオス語を学びます。)
(6)ຢູ່ໂຮງຮຽນຂ້ອຍຮຽນພາສາລາວທຸກວັນຈັນ
(~で+学校+私+学ぶ+言語+ラオス+毎週月曜日=学校では、私は毎週月曜日にラオス語を学びます。)