東京外国語大学言語モジュール

Step3 : 丁寧体

これだけは覚えよう
1 丁寧体は、聞き手や読み手への敬意を表わす文体です。目上の人や親しくない人と話すときや改まった場面、また手紙文などで使います。
2 丁寧体は、今まで勉強してきた丁寧形、つまり、「します、しません、しました、しましょう、です、ではありません、でしょう、でした」などの形を使うものです。
3 名詞修飾節(→「V+N」の解説4)の中の述語は、原則として丁寧形を用いず、普通形を用います。
(4)きのう見た映画はおもしろかったです。
(4)’×きのう見ました映画はおもしろかったです。
4 「スタイルとは」の解説の中で述べたように、日本語の談話・文章では同一のテキストの中では一つの文体が一貫して使われるのが原則です。ただし、次のような場合にはその原則が失われます。
(5)授業に毎回出席する。これがわたしの今年の目標です。
¶このタイプの特徴は、普通体の部分が従属節に近い内容である点です。この場合は、丁寧体は使えません。下の(5)’は不自然な文連続になります。
(5)’授業に毎回出席します。これがわたしの今年の目標です。
5 複文の場合、S1が丁寧形になるかどうかは、S1の接続によってちがいます。
①原因・理由を表わす「~から/ので」の場合、ことがらの理由を表わす場合はS2が丁寧形でもS1は普通形のほうが自然ですが、判断の根拠を表わす場合はS2が丁寧形ならS1も丁寧形のほうが自然です。
(6)わたしは英語が苦手なので勉強します。
(6)’?わたしは英語が苦手ですので勉強します。
(7)星がたくさん出ていますからあしたは晴れでしょう。
(7)’?星がたくさん出ているからあしたは晴れでしょう。
②「~が、~けど、~けれど(も)」の場合は、S2が丁寧形ならS1も丁寧形になるほうが自然です。
(8)わたしは学生ですが、兄は会社員です。
(8)’??わたしは学生だが、兄は会社員です。
余裕があれば
6 丁寧な話しことばの中で「です」の代わりに「でございます」が用いられる場合があります。
(9)以上で発表は終わりでございますが、何かご質問はありますか。
7 普通体の談話・文章の中に丁寧体の文が使われる場合、あるいは、丁寧体の談話・文章の中に普通体の文が使われる場合があります。
①普通体の談話・文章の中で丁寧体を使う場合
この場合は、丁寧体の部分で改まりの気持ちを表わすことができます。
(10)頼む。金を貸してくれ。お願いします。
②丁寧体の談話・文章の中で普通体を使う場合
この場合は、普通体の部分が話し手(書き手)の独白(ひとりごと)であるのがふつうです。聞き手を意識していないので普通体を用います。
(11)年が明けました。新しい年の始まりです。今年はどんな年になるんだろう。