副助詞(取り立て助詞、取り立て詞)は、さまざまな語について、特別な意味を付け加えます。
主なものに、次のようなものがあります。助詞ごとに用法を説明します。
Ⅰ 「は」(「ワ」と発音します)
これだけは覚えよう
1 「~は」を含むことがらを、他のことがらと対比する意味を付け加えます。
(11)ここにえんぴつがあります。赤いえんぴつは3本あります。青いえんぴつは2本あります。
(15)山田さんはドイツ語は上手です。(フランス語は上手ではありません。)
(16)きょうの会議に20人は集まりました。(それ以上集まったかどうかはわかりません。)
2 「が」や「を」がつくことのできる名詞(ガ格、ヲ格)に「は」がつくと、とくに他と対比する意味を持たず、「それについて言えば」という意味を表わすことが多いです。この場合の「は」を「主題(題目topic)」と言います。
Ⅱ 「も」
これだけは覚えよう
1 「~も」を含むことがらに、「他のことがらと同様にこのことがらが成立する」という意味(並立・付加)を付け加えます。
(23)きょうのコンサートには100人も来ました。(70人、80人集まったのは当然として)
(24)きょうは誰も来ませんでした。(太郎さんが来ない、次郎さんが来ない、…その上に)
2 1の用法の特殊な場合として、その状況で起きているさまざまなことがらの一例として、あることがらを表わす場合があります。
(25)時間も来ました。そろそろ終わりにしましょう。
(26)(おなかがすきました。みんな疲れています。……)
Ⅲ 「だけ」「ばかり」
これだけは覚えよう
1 名詞や動詞について、そのものを他の同類のものから区別する意味(限定)を表わします。
(2)佐藤さんだけ来ました。(鈴木さん、田中さん、木村さん……は来ませんでした。)
(3)肉ばかり食べます。(ごはん、野菜……は食べません。)
2 「だけ」は、動詞や形容詞などについて、おおよその量や程度を表わすことがあります。
Ⅳ 「こそ」
これだけは覚えよう
名詞や動詞について、そのものを特に強くさし示す意味(卓立強調)を表わします。
Ⅴ 「しか」
これだけは覚えよう
それ以外ではことがらが成立しないこと(その他否定)を表わします。述語は必ず否定形になります。
Ⅵ 「など」
これだけは覚えよう
1 名詞や動詞などについて、他に同類のものが存在することを暗示します。
(36)辞書を引いたり、インターネットで調べるなどしました。
2 名詞や動詞などについて例示の意味を表わすこともあります。
(37)小泉氏などの政治家にインタビューしました。
(38)試験中にとなりの人と話すなどのことはしてはいけません。
余裕があれば
3 2の用法の拡張として、断定を和らげるために用いたり、それは取るに足りないという意味を暗示したりすることがあります。
(40)つまらない仕事などに時間を使いたくありません。
Ⅶ 「でも」
これだけは覚えよう
1 名詞について、例示の意味を表わします。断定を和らげるために用いることもあります。
2 いろいろな語句について、それがことがらを成立させる最低限のものであること、そのもの以外にことがらを成立させるもっとよいものがたくさんあることを暗示します。
(41)ボールペンを持ってこなかった人は、えんぴつでもいいです。(→「Nでもいいです/Nではだめです」)
(43)このアルバイトは、いそがしい人でもできます。
余裕があれば
3 「でも」の2と同じ用法を持つ助詞に「だって」があります。
Ⅷ 「まで」
これだけは覚えよう
1 名詞について、「他のものの他にそれが付け加わった」という意味(添加)を表わします。「範囲がそこまで広がった」という意味を暗示します。
(8)佐藤さんや田中さんが来ました。山田さんまで来ました。
2 動詞などについて、動作や状況がある段階に到達することを表わします。
(45)日本語を勉強して、留学生試験に合格するまでになりました。
余裕があれば
格助詞としての用法もあります。(→「格助詞」の解説Ⅴ)
Ⅸ 「さえ」
これだけは覚えよう
1 添加の意味を表わします。多くの場合「ふつう起きないことが起きる」という意味を暗示します。
(9)佐藤さんや田中さんが来ました。山田さんさえ来ました。
2 条件を表わす節の中の語句について、それがことがらを成り立たせる最低限のものであること(only if)を表わします。
(47)山田さんさえいたら、この試合には勝てるのに。
Ⅹ 「くらい(ぐらい)」「ほど」
これだけは覚えよう
1 数量を表わす名詞について、大体の量を表わします。
2 だいたいの程度を表わす場合に使うこともあります。
ⅩⅠ 副助詞全体についての補足
余裕があれば
1 副助詞は、「名詞+助詞」につくこともできます。
¶格助詞「が」「を」がつくことのできる名詞(ガ格、ヲ格)に副助詞がつく場合は、格助詞なしで名詞に直接つきます。「に」「へ」「まで」など、その他の格助詞がつく場合は、通常「名詞
+
格助詞」の次に副助詞がつきます。
2 一部の副助詞は、「名詞+副助詞」でひとまとまりの名詞のようにふるまうことがあります。その場合、次に格助詞がつきます。
3 「こそ」は、接続助詞「ば」「から」につくこともあります。
(57)あなたのことを思えばこそ(思うからこそ)言うのです。