東京外国語大学言語モジュール

Vていきます/Vてきます

これだけは覚えよう
1 「Vて」に「いきます」、「きます」が接続した「Vていきます」(普通形「Vていく」)、「Vてきます」(普通形「Vてくる」)という形があります。
 
Vて
いきます
 
(1)駅まで歩いていきます。
(2)これからも日本語を勉強していきます。
 
Vて
きます
 
(3)おみやげを持ってきました。
(4)高校の友だちがメールを送ってきました。
(5)日本語を学ぶ人が増えてきました。
2 「Vていきます」「Vてきます」は、話し手など文中の特定の人物の視点を基準にした空間的な移動の方向性を示す用法と、特定の時点からのできごとの時間的推移や展開のとらえ方を示す用法があります。
移動の方向を表わす場合
3 「Vていきます」は話し手の発話時の位置から離れていく遠心的方向性を持つ動作・できごとに、「Vてきます」は話し手の発話時の位置のほうへ向かってくる求心的方向性を持つ動作・できごとに対して使います。
(1)駅まで歩いていきます。
(3)おみやげを持ってきました。
4 話し手が聞き手のほうへ移動することを伝える場合、「Vていきます」を使います。
(6)来週そちらへ行くとき、飲み物を買っていきます。 
(6)’×来週そちらへ行くとき、飲み物を買ってきます。
5 「Vていきます」「Vてきます」は前に来る動詞の性質によっていくつかの用法に分けられます。
 
①「歩く、走る、泳ぐ」など、移動を表わす動詞に「ていきます」「てきます」がつくと、これらの動詞は移動の様式を表わします。
(1)駅まで歩いていきます。
¶移動の場所は「Nを」で表わします。
(7)駅前の通りを歩いてきました。
¶これらの動詞は単独でも移動を表わしますので、第三者の移動や話し手自身の過去の移動を客観的に表現する場合は「ていきます、てきます」なしで用いるのがふつうです。
(1)’駅まで歩きました。
②「着る、持つ」などに「ていきます」「てきます」がつくと、「ていきます」「てきます」はこれらの動作の結果の状態を伴って移動することを表わします。
(3)おみやげを持ってきました。
③「食べる、買う」など一般的な動作を表わす動詞に「ていきます」「てきます」がつくと、「ていきます」「てきます」は「食べる、買う」などの動作の後に生じた移動を表わします。これらの動作の後の移動に着目されていない場合は、動詞だけでも表わすことができますが、移動に着目した場合や動作の結果が発話の場所まで残っている場合には「Vていきます」「Vてきます」を用いたほうが自然です。特に、ある動作が発話の場所以外で行なわれることを表わす場合には「Vてくる」を用いたほうが自然です。
(8)授業まで時間があるので、朝のニュースを見ていきます。
(9)きょうは友だちと夕飯を食べてきました。
6 「品物を送る、手紙を書く、電話をかける」など対象の移動を表わす動詞や、それに準ずる移動の意味を持つ動詞は、話し手の方向への移動をそのままでは表わすことができません。この場合、必ず「Vてきます」を使います。
(4)高校の友だちがメールを送ってきました。
できごとの時間的推移を表わす場合
7 特定の時点を基準にして、その基準時以前から基準時への推移・変化を表わす場合には「Vてきます」(例文(5))、基準時から基準時以後への推移・変化を表わす場合には「Vていきます」を使います(例文(2))。
(2)これからも日本語を勉強していきます。
(5)日本語を学ぶ人が増えてきました。
8 基準時が現在・過去・未来のいずれであるかによって、「Vてきます、Vていきます」の形が変わってきます。
 
9 「増える、変わる、(雪が)解ける」など、変化を表わす動詞とともに「Vてきます」「Vていきます」を用いると、変化が徐々に進んでいく様子を表わします。
(5)日本語を学ぶ人が増えてきました。
余裕があれば
10 「教える、売る」なども、「送る」などと同じように、「〔人〕が〔人〕に〔もの〕を~」というパターンを取る動詞ですが、これらの動詞に「Vてきます」はつかず、つくと、「必要ないのに~した」という強意的な意味を帯びるのがふつうです。これは、「教える」などの動詞には受け手側を主語にした「教わる、買う」などの表現があるためです。
(10)木村さんはわたしに古本を売ってきました。 
(10)’わたしは木村さんから古本を買いました。