東京外国語大学言語モジュール

条件

これだけは覚えよう
1 「~と」「~ば」「~たら」「~なら」は、S1を条件としてS2が起こるという関係の複文を作るときに使います。これらは、接続、意味の点で違いがあります。
「と」「ば」「たら」の使い方
2 「~と」は、基本的に、S1が起これば通常S2が起こるという、反復的・恒常的に成り立つ関係を表わすときに使います。たとえば、自然現象(例文(1))や習慣(例文(5))、機械の操作と結果(例文(6))などです。
 
 
(1)雨が降ると、雪が解けます。
(5)父は毎朝起きると、新聞を読みます。
(6)このボタンを押すと、ドアが開きます。
(7)成績が悪いと進学できません。
(8)部屋が静かだとよく勉強できます。
(9)成績が60点以上だと合格です。
3 「~と」は、普通形・非過去の形に「と」をつけて作ります。「た形」には続きません。丁寧形にすることがありますが、非常に丁寧な言い方なので、覚えなくてもよいです。
4 「~ば」も、基本的に恒常的に成り立つ関係を表わすときに使います。
 
 
(2)卒業論文を出せば、卒業できます。
(10)安ければ、買います。
¶「~ば」は、ことわざに代表されるような一般的・法則的なことがらを表わすのによく使われます。
(11)ちりもつもれば山となる。
5 「~ば」は一回的なことがらの仮定条件にも使えます。
(12)あした雨が降れば、運動会は中止です。
6 「~ば」は動詞、形容詞の「ば形」を用いて作ります。
「ば形」は以下のとおりです。
動詞
辞書形
ば形
グループ1
 書く
 書けば
 読む
 読めば
グループ2
 起きる
 起きれば
 受ける
 受ければ
グループ3
 来る
 来れば
 する
 すれば
 
イ形容詞
辞書形
ば形
 白い
 白ければ
7 「~たら」は、基本的に、特定的、一回的な仮定-帰結の関係を表わすのに使います。まだ起きていないS1の成立が原因やきっかけとなってS2が起きることを表わします。(この点が、後で述べる「~なら」との違いです。)
 
 
(3)あした雨が降ったら、試合は中止します。
(13)暑かったら、エアコンをつけてください。
(14)あした晴れだったら、ドライブに行きましょう。
(15)ひまだったら、遊びに来ませんか。
8 「~たら」は、動詞、形容詞の「た形」に「ら」をつけて作ります。
継起関係を表わす「と」と「たら」
9 「~と」と「~たら」は、S1、S2が、時間的に前後して起きた、という継起関係を表わすことができます。
(16)部屋で{勉強していると/勉強していたら}、太郎が来ました。
(17)木村さんに手紙を{出すと/出したら}、すぐに返事がきました。
「なら」の使い方
10 「~なら」は、「~と」「~ば」「~たら」と性質が違います。「~なら」は、S1のことがらを仮定してS2にそれに対する話し手の判断・命令・希望・意志などを述べる場合に使います。
 
 
(4)あの大学へ行くなら、自転車が便利です。
(18)近いなら歩きましょう。
(19)嫌ならやめてもいいですよ。
(20)大学生ならこのくらいはできるはずです。
11 「~なら」は、聞き手の発言の内容を条件として受けるときに使います。(「~と」「~ば」「~たら」には、この用法はありません。)聞き手の発言によって新しく知ったことがS1で、それにもとづく帰結がS2になります。
(21)A:家にパソコンがあります。
   B:パソコンがあるなら、インターネットができますね。
12 「~なら」の文では、ことがらの前後関係がS1→S2、S2→S1のどちらの場合もありますが、他の3つはS1→S2しかありません。
(22)車を買うと、お金がなくなります。
(23)車を買えば、どこでも行けます。
(24)車を買ったら、ドライブをしよう。
13 「~なら」は、普通形に「なら」をつけて作ります。
¶「~なら」の前に「の」や「ん」が入ることがありますが、ほとんど同じ意味です。話しことばでは「のだったら/んだったら」になることもあります。
(21)’B:パソコンがあるのなら、インターネットができますね。
余裕があれば
副詞「もし」
14 仮定表現であることをはっきりと表わすために、文頭に「もし」を入れることがあります。
(12)’もしあした雨が降れば、運動会は中止です。
「~と」「~たら」の発見用法
15 「~と」「~たら」には、S1の動作をした結果、S2のことがらを発見したという関係を表わす用法があります。
(25)学校に{行くと/行ったら}、新入生がたくさんいました。
¶ただし、この使い方の「~たら」は、くだけた話し方だという印象を与えますから、注意が必要です。
「~ば」の使い方補足
16 「~ば」は、S2の成立が望まれているという文脈で、そのためにどんなS1が必要かを述べる文(S1に焦点のある条件文)には、最もふさわしい形式です。
(26)A:どうすれば、漢字を覚えることができますか。
   B:毎日、新聞を読めば、覚えることができますよ。
¶そのため、次のような文では、「~ば」と「~と」では意味に少し違いがあります。
(6)このボタンを押すと、ドアが開きます。
(6)’このボタンを押せば、ドアが開きます。
¶ドアの開け方を聞かれたときの答えとしてふつう使うのは「~ば」の文で、「~と」を使うと、一般にドアの開け方を説明している感じがします。
17 「~ば」の文では、S2に望ましいことがらがくることが多く、望ましくないことがらの場合に「~ば」を使うと不自然な文になります。
(27)お酒を{?飲めば/○飲むと/○飲んだら}、気分が悪くなります。
18 S2に「さえ」などを伴って、S2が成立するための最低条件を示す用法は、「~ば」にしかありません。
(28)教科書さえ{○あれば/×あると/?あったら}、勉強できる。
まとめ
19 「~と」「~ば」「~たら」「~なら」の中で、使える範囲が最も広いのは「~たら」です。「~たら」が使えない場合を知っておけば、不自然な文を作らなくてすみます。
「~たら」が使えないのは、論理的・時間的にS1が先、S2が後に、という関係にない場合です。そのような場合には、「~なら」を使います。
(4)’×あの大学へ行ったら、自転車が便利です。
20 下に、「~たら」でもまちがいではないが、ほかの形式のほうが自然な場合をまとめておきます。
 
①S1に焦点のある条件文の場合、「~ば」がふさわしいです。
(26)A:どうすれば、漢字を覚えることができますか。
   B:毎日、新聞を読めば、覚えることができますよ。
②S2が成立するための最低条件を表わす場合、「~ば」がふさわしいです。
(28)教科書さえあれば、勉強できる。
③恒常的・一般的条件の場合、「~ば」または「~と」がふさわしいです。
(1)雨が降ると、雪が解けます。
(2)卒業論文を出せば、卒業できます。
¶①、②の場合、「~と」は使えません。