東京外国語大学言語モジュール

様態,回数による限定  【アスペクト】

日本語の「書く」は,文字などを書く行為一般を表しますが,「書いた」と言えば,「(誰かがどこかで何かを)書いた」という過去の出来事や,書き終わったという出来事の「完了」を表すことができます。
「過去」と「完了」とは,必ずしも一致しません。たとえば,未来のことであっても,話し手が何らかの出来事が起きる未来の時点を想定して,あたかも未来に身を置いたかのように,出来事の開始,継続,終了を語ることもできるからです。
日本語で「答案を書いたら提出してください」と言うときの「書いた(ら)」は,話し手がこのように言った時点で「書く」行為がまだ開始していないか,あるいは書いている最中であっても使うことができます。このことから,過去と完了とは異なる概念であることがわかると思います。