東京外国語大学言語モジュール

文法と基本語順

サンスクリット語では語順は自由で,語順による(文脈的な)意味の違いは存在しないと言われています。このような言語の韻文では,韻を踏むためにアクロバティックな語順を用いることも可能です。サンスクリット語では,語と語の関係を示すために,語そのものの形がさまざまに変化する,「屈折(活用)」の体系が発達しています。こういう言語のタイプを「屈折語」と言います。
一方,「機能語が少ない言語は,語順が固定している」とは言えません。東南アジア大陸部には,文法関係を表すための語の形の変化を持たない言語があります。このようなタイプの言語を「孤立語」と言います。孤立語ではまた,文法関係を表す「機能語」も少ないのですが,文頭に名詞を「主題」として置くことで「(他の学校ではなく)この学校では日本語を教えている」「(他の言語ではなく)日本語はこの学校で教えている」といった意味の違いを表すことができます。
SOV を基本語順とする言語(例:日本語,トルコ語)とか,SVO を基本語順とする言語(例:英語,フランス語)という言い方は,便利なのでよく使われますが,固定語順,自由語順という違いを無視した言い方であることに注意してください。たとえば中国語では,「SV, OV といった言い方のほか,SVO の三者を同時に言う場合には SVO となる」と表現した方が適切かもしれません。VOS といった語順を持つ言語(例:マラガシー語あるいはマダガスカル語)も存在します。