東京外国語大学言語モジュール

人称代名詞(間接目的語と直接目的語)の語順

代名詞の目的語は、初級文法の難所の1つです。ステップ1からステップ3までを段階的に学習するのがいいと思います。
ステップ1
このステップ1は最も基本的な内容の解説です。
(1) Je le lui donne.
(私はそれを彼に贈る。)
(2) Frédéric me le donne.
(フレデリックは私にそれを贈る。)
まず原則の確認をしておきましょう。フランス語では人称代名詞の目的語は「動詞の前」に置かれます。それについてはカード37の解説で学びました。それにしてもちょっと変です。(1)ではle lui「それを彼に」という語順なのに、(2)ではme le「私にそれを」という語順になっています。日本語ではこうした順番は気にしなくていいのにフランス語は厳密です。規則は次のようになります。
(1) 直接目的語+間接目的語
  3人称の直接目的語(le, la, les)+3人称の間接目的語(lui, leur)
(2) 間接目的語+直接目的語
  1・2人称の間接目的語(me, te, nous, vous)+3人称の直接目的語(le, la, les)
別の例をあげましょう。
(3) Je les lui ai déjà montré(e)s.
(私はそれらを(les)彼女に(lui)すでに見せました。)
(4) Je ne vous les conseille pas.
(私はあなたに(vous)それらを(les)勧めません。)
とりあえずここまでの内容を完全に覚えてください。それができたらステップ2とステップ3で、さらに詳しい事項を学びましょう。
 
ステップ2
人称代名詞の目的語は常に「動詞の前」におかれるとは限りません。例外的に動詞の後ろにおかれることがあります。
(5) Donnez-moi un croissant.
(私にクロワッサンを1つください。)
→ Donnez-m'en un.
(私にそれ(=クロワッサン1つ)をください。)
(6) Donnez-moi du café
(私にコーヒーをください。)
→ Donnez-m'en.
(私にそれをください。)
(5)と(6)のような肯定の命令文では、人称代名詞の強勢形(moi「私に」)が動詞の前ではなく、後ろに置かれます。この文のun croissantやdu caféを代名詞にすると、不定冠詞や部分冠詞がついている名詞ですから、代名詞はenになります(→カード57を参照)。そして代名詞enは人称代名詞の後ろに置かれるため、「私に」は強勢形のmoiではなく、非強勢形m'となり、上の例にように-m'enという形になります。代名詞のyも同様です(→カード77を参照)。
(7) - J'ai vu Étienne au pachinko.
(エティエンヌをパチンコ屋で見かけたよ。)
- Étienne ? Non, ce n'est pas possible !
(エティエンヌを? まさか、そんなわけないよ)
- Mais si ! Je l'y ai vu.
(本当だよ! 彼をそこで見かけたんだ。)
ステップ3
最後にもう1つ注意すべきことがあります。次のような場合です。
(8) Ces cravates lui ont beaucoup plu.
(これらのネクタイは、たいへん彼の(lui)気に入った。)
(9) Et il les a toutes achetées.
(だから彼はそれらを( les )全部買った。)
(9)の例で、代名詞の直接目的語les「それらを」は助動詞avoirの前におかれています。このような場合、過去分詞achetéは直接目的語(= les cravatesで女性名詞複数形)に性・数が一致し、女性複数形の語尾-esをつけて、achetéesと綴ります。では例文に進み、フランス語を聞いてみましょう。