格助詞は、主に名詞について、その名詞と他の語(他の名詞、あるいは、述語としての動詞・形容詞)との意味関係を示します。
以下、助詞ごとに用法を説明します。
Ⅰ 「が」
これだけは覚えよう
1 述語に対する主語を表わします。
¶日本語では、存在するもの、感情の向かう対象も「が」で表わします。また、希望する動作の対象、可能を表わす文における動作対象なども「が」で表わすことがあります。これらの「~が」も主語であると考えられます。
(12)机の上に本があります。(→「Nがあります/います」、「NにNがあります/います」)
(13)コンピューターがほしいです。(→「Nがほしいです/Nがほしくありません 」)
(14)ふるさとがなつかしいです。(→「Nがすきです/Nがすきではありません/Nがきらいです」、「こわい・悲しい・うれしい、など」)
(15)水{が/を}飲みたいです。(→「Vたいです/Vたくありません」、「Vたかったです/Vたくありませんでした」)
2 名詞を修飾する節の主語は「の」でマークすることがあります。(→Ⅸ)
余裕があれば
3 「~が」にあたる名詞を「~から」「~で」でマークすることがあります。(→Ⅵ、Ⅷ)
4 副助詞がつく場合には、「が」は現れません(「副助詞:の解説ⅩⅠ「副助詞全体について」)。また、話しことばでは、「が」なしで表現する場合があります。
Ⅱ 「を」(「オ」と発音します)
これだけは覚えよう
1 他動詞の表わす動作の対象を表わすほか、移動の出発点や通過点・経路を表わします。
(1)山田さんが本を読みました。(動作の対象)(→「NをVます」、「NにNをVます」)
2 出発点を表わす用法の拡張として、離脱する組織などを表わすこともあります。
3 経路を表わす用法の拡張として、ことがらが継続する期間やことがらを取り巻く状況を表わすこともあります。
余裕があれば
4 副助詞がつく場合には、「を」は現れません(「副助詞」の解説ⅩⅠ「副助詞全体について」)。また、話しことばでは、「を」なしで表現する場合があります。
Ⅲ 「に」
これだけは覚えよう
1 非常にさまざまな関係を表わします。そのうち、主なものをあげます。
2 広く人と人の間のものや情報のやりとりを表わす動詞について、ものや情報の受け取り手を表わします。
(29)山田さんにプレゼントを贈ります。(→「NにNをVます」)
(30)田中さんに英語を教えます。(→「NにNをVます」)
(31)木村さんに本をあげます。(→「やりもらい」)
3 ものを移動させる行為を表わす動詞について、対象であるものの到着点を表わします。
4 いくつかの動詞について、動作の相手となる人を表わします。
7 使役を表わす動詞・受身を表わす動詞の文で、動作主を表わします。
(50)教室に佐藤さんがいます。(→「NにNがあります/います」)
(51)机の上に本があります。(→「Nの上/下/中/前/後」)
11 行為を表わす名詞や、動詞の連用形((「動詞の3種類」)、「動詞基本形+の」(「Vこと・Vの」)について、行為の目的を表わします。
余裕があれば
13 原因・理由を表わすことがあります。
14 動詞連用形(「動詞の3種類」)について、その動詞を重ね、強調します。
(62)カラオケで歌いに歌って、声が出なくなりました。
Ⅳ 「へ」(「エ」と発音します)
移動の方向や着点を表わします。(→「NへVます」)
Ⅴ 「まで」
これだけは覚えよう
1 ことがらが成り立つ範囲の限界点を表わします。(←→「から」)
(64)8月1日から9月30日まで夏休みです。(時間の範囲)
(65)1番の人から10番の人まで入ってください。(ことがらにあてはまる人やものの範囲)
(66)大人から子どもまで人気があります。(ことがらにあてはまる人やものの範囲)
(67)この店は、おかしからチケットまで、なんでも売っています。(ことがらにあてはまる人やものの範囲)
余裕があれば
2 副助詞としての用法もあります。(→「副助詞」の解説Ⅷ)
Ⅵ 「から」
1 範囲の起点を表わします(←→まで)
(69)あしたから夏休みです。(時間の範囲:起点)
3 出発点を表わす用法からの拡張で、「が」の代わりにものや情報の与え手としての主語を表示することがあります。(→Ⅰ)
4 「に」の代わりに、使役や受身の動作主を表示することがあります。
Ⅶ 「より」
これだけは覚えよう
1 比較の基準を表わします。
余裕があれば
2 出発点や時の起点を表わすのが本来の用法です。
Ⅷ 「で」
1 非常にさまざまな関係を表わします。そのうち、主なものをあげます。
(78)公園でコンサートがあります。(→「NにNがあります/います」)
(6)食堂でごはんを食べます。(→「Vます/Vません」)
(83)あしたでもいいです。(→「Nでもいいです/Nではだめです」)
(84)これではだめです。(→「Nでもいいです/Nではだめです」)
6 ことがらを表わす名詞について、原因・理由を表わします。
8 数量・部分量を表わす名詞について、行為者の数量を表わします。
9 ことがらが成立するのに使う時間などの量を表わします。
(96)このコンピューターを20万円で買いました。
10 場所を表わす用法の拡張として、主語を場所風に表わすときに用いることがあります。(→Ⅰ)
Ⅸ 「の」
1 名詞について、ほかの名詞との間に何かの関係があることを表わします。
2 「が」に代わって、名詞を修飾する節の主語を表わすことがあります。(→Ⅰ)
(105)鈴木さんの言ったこと(→「Vこと・Vの」)
Ⅹ 「と」
1 2つ以上の名詞を並べ立てるときに使います。くわしくは「NとN」を見てください。
(107)佐藤さんは鈴木さんと学校に行きました。(「といっしょに together with」と言い換えられる)
(108)田中さんは山田さんと結婚しました。(「といっしょに together with」と言い換えられない)
(112)朝起きたときには「おはようございます」と言います。
(113)毎日ジョギングをする人はえらいと思います。(→「~と思います」)
ⅩⅠ 「や」
1 2つ以上の名詞を並べ立てるときに使います。くわしくは「NやN」を見てください。