1. 「~していた」
 過去形 kaan は後に続く動詞の時制を過去にずらすことができます。<b-動詞現在形>の時制を過去にずらすには、<kaan + (b-)動詞現在形>の文型を使います。
 
| 
بيشتغل  بيّاع مخلّل.
 | 
 byəʃtəġel bayyaaʕ mxallal
 | 
  「彼は漬物売りをしている」
 | 
| 
كان  يشتغل  بيّاع مخلّل. 
 | 
kaan yəʃtəġel bayyaaʕ mxallal
 | 
  「彼は漬物売りをしていた」
 | 
 
  次の例文は、亡くなった父親について話している場面から引用したものです。
 
أبي كان يشتغل بيّاع مخلّل.
(父は漬物売りをしていたんだ。)
[ʔab-i kaan yəʃtəġel bayyaaʕ mxallal]
 
 
 
 
(ドラマ『バーブ・ル・ハーラ』第3部, 第2話より)
 
お父さんはすでに亡くなっているので、もう働いていません。ですから、動詞現在形の前に kaan をつけて「働いていた」と言っているのです。
 
 否定の場合は kaan の前に maa をつけ、<maa kaan+(b-)動詞現在形>とします。
 
ممنوع تكبّ زبالة بالشارع. ... عفواً. ما كنت بعرف.
 
道にごみを捨てちゃダメでしょ。…ごめんなさい。知らなかったんです。
mamnuuʕ tkəbb zbaale bəʃ-ʃaareʕ ... ʕafwan. maa kənt baʕref
(
会話モジュール32「禁止する」)
 
maa baʕref は「私は知らない」という意味ですから、謝罪の意味にはなりません。それどこか、「何のこと?」「そんなの知らねーよ」というニュアンスに聞こえてしまうかもしれません。kənt をつけて時制を前にずらすことによって、「知らなかっただけですから、許してください」というニュアンスを出しているのです。
 
 
2. 「~していた」(進行していた動作)
 <ʕam-動詞現在形>「~している」の時制を過去にずらし、「~していた」と言うには<kaan + ʕam-動詞現在形>の文型を使います。
| 
عم دوّر
 | 
ʕam-dawwer 
 | 
 「私は探している」
 | 
| 
كنت عم دوّر
 | 
kənt ʕam-dawwer  
 | 
 「私は探していた」
 | 
 
 
لقيت الكلمة اللي كنت عم دوّر عليها.
 
 
3. 「~するところだった」
 <raħ-動詞現在形>の時制を過去にずらすには、<kaan+raħ-動詞現在形>を使います。次の例文は、慣れない水タバコを吸って、咳きこんでしまったあとに言ったせりふです。
كنت رح إختنق.
(窒息するところだったよ。)
[kənt raħ-ʔəxtəneʔ]
 
 
 
 
(ドラマ『バーブ・ル・ハーラ』第3部, 第28話より)
 
 
 4. 「~したかった」
 「~したかった」と言うには、<kaan+bədd-接尾代名詞+動詞現在形>の文型を使います。
شو كنتي بدّك تقولي؟
(貴女、何を言いたかったの?)
[ʃuu kənti bədd-ek tʔuuli]
 
 
 
 
(ドラマ『バーブ・ル・ハーラ』第3部, 第26話より)