東京外国語大学言語モジュール

Step2 : 省略

次の文の意味を見てみましょう。
(1)ຂ້ອຍກິນລາບມື້ວານນີ້
(私+食べる+ラープ+昨日=私は昨日、ラープを食べました。)
(1)の文の意味は、「私がラープを食べたのは、昨日です」です。これは「いつ」食べたかに対する答えの文になることからわかるように、一番言いたいことは文末部分の「昨日」ということになります。つまり、文末にもっとも伝えたいことを置きます。
(2)ກິນລາບມື້ວານນີ້
(食べる+ラープ+昨日=ラープを食べたのは昨日です。)
(3)ກິນມື້ວານນີ້
(食べる+昨日=食べたのは昨日です。)
「いつ」食べたのか、「いつ」だけが重要な場合、既知のものは省略できますから、(2)も(3)も文の意味は(1)と同じで、「昨日」が伝えたい文です。ただし、動詞「ກິນ」も省略して、「ມື້ວານນີ້」一語だけですと、ぶっきらぼうに聞こえることもあります。動詞は文としての体裁を整えるという点から省略しない方いいでしょう。

また、(1)ととてもよく似ていますが、
(4)ມື້ວານນີ້ຂ້ອຍກິນລາບ
(昨日+私+食べる+ラープ=昨日、私はラープを食べました。)
は、「昨日、あなたは何を食べましたか?」に対する答えの文になることからわかるように、一番言いたいことは文末部分の「ラープ」ということになります。
(5)ກິນລາບ
(食べる+ラープ=ラープを食べました。)
(6)ລາບ
(ラープです。)
(5)も(6)も「ラープ」を一番言いたいのですが、やはり(6)はぶっきらぼうに聞こえるかもしれません。このとき、主語である「私」を文頭に置いて、
(7)ຂ້ອຍກິນລາບ
(私+食べる+ラープ=私がラープを食べました。)
と言うと、「他の人と異なって私が~」という意味がむしろ付加されてしまいます。例えば、「私はラープだが、彼は○○を食べる」と言った、比較対照をしている意味に解釈されます。

このように、わかっていれば省略、言えばその分、意味が付加されるので、「省略」は、ラオス語にとって重要な文法規則の一つです。